1 文書にしておくことは一つの知恵

業務マニュアルのない組織は、かなりあります。いちいち文書にしなくても、業務がきっちりなされているなら、問題ありません。ここでいう「きっちり」というのは、曖昧な言い方に聞こえますが、組織が信頼され、成果を上げているということです。

組織が信頼されるには、ある程度の長さが必要です。成果も一時的でなく、継続してあげていく必要があります。そうなると組織の運営の仕組みが、決まっていないといけません。この点の詰めが甘いと、信頼され成果を上げるという点で不十分なことになります。

何かを詰めていくとき、記述されていることが有利に働くことは間違いないでしょう。明確性を確保するためにも、記述することは必要です。一定以上のことを成す約束をしたとき、私たちは当然のように契約書を作ります。トラブルがないようにするためです。

記述すること、文書にしておくことは、一つの知恵だと言えます。その点で、業務マニュアルを書いておくというのは、おかしなことではありません。ただし、契約の書き方がわからないというのと同様の問題が生じています。たしかに簡単ではありません。

      

2 マニュアルがないことのリスク

業界でトップクラスの会社であっても、業務マニュアルのない組織はあります。よくないという認識をお持ちでした。ささやかな経験ですが、こうしたトップ企業の幹部の方とお話をしたことが何度かあります。全員、まずいですとおっしゃっていました。

しかし作成するのに適任者がいないというのです。社内にいないので、どうしたものかという話になりました。記述できる人がいないのですから、的確なマニュアルなどできるはずありません。ただ危機感は感じられませんでした。別のことが優先されます。

現状はよろしくなくても、それほど危機的な状況ではないという認識です。その後の業績が、まさにそれを反映しています。業績が伸びている会社や、あるいは業績が伸び悩んでいたり株価が3分の1程度になっていても、いずれの会社もびくともしていません。

おそらく心配の仕方、不安の心理のあり方の問題でしょう。契約書なしの約束が不安かどうかということです。業務マニュアルがないのは、自社のビジネスモデルが記述できていないということになります。そのことにリスクや不安を感じるかどうかの問題です。

      

3 業績を上げる業務マニュアル

いまでも業績が伸びている会社では、研修の後に、各部門のリーダーの方々ともお話が出来ました。こういうとき本音が聞けます。そのときある地域で業績を上げていたそのリーダーは、マニュアルに書いても業績が上がるわけではないからねとおっしゃっいました。

まさに、これが業務マニュアルについての標準的な認識でしょう。文書にしても業績が上がらないというならば、あえて書く必要などないのです。実際、かつて作成したマニュアルはもはや読まれていません。作成は無駄でした。なくても困らないのです。

業績が上がらなかったら、業務マニュアルの作成の仕方に問題があるのです。適切に作成がなされるなら、作成過程で必ず業務を見直す箇所が見つかり、効率化につながります。当然、業績にも影響するでしょう。本来、業務マニュアルを作れば業績が上がるのです。

     

    

1 将来性への不安が激変を起こす

あるとき突然、学力が全く違った一群の生徒がやってきて、従来のやり方では通用しないということが起こります。もはやめずらしくはないことです。ガクッと下がるのですから驚くはずなのですが、たいてい気がつきません。なぜそんなことになるのでしょうか。

たとえば進学高校ならば、学力が急変することはあまりないはずです。しかし専門学校や大学なら、こうしたことが起こります。平均値がそこまで劇的に下がっていないのに、ある学校や学科に激変が起こるのです。いまのところ、原因が明確に示されていません。

これは学校ばかりではないのです。会社でも起こります。実際にこうした現象は、会社で先に起こっていました。学校、企業だけでなく、その他の組織でも起こりうることです。いくつかの事例と実際に関わった経験からすると、わりあい簡単に理由が思いつきます。

将来性への不安が激変を起こさせるのです。その学校の学科や、その会社の将来性に不安を感じる人達が増えたならば、成績優秀者と言われる人たちはやってこなくなります。不安を感じさせる領域にやってくる人の総数が減り、優秀者が減るということです。

    

2 組織の格差が広がりやすくなってきた

現在、プロフェッショナル人材を育成しても、会社に定着してくれるかわかりません。かつてどうやってプロを育てたらいいのかと苦労していた役員たちも、諦め気味です。やっと育った社員が、いい条件の提示を受けて他社に移って行かれてはお手上げでしょう。

選択肢が増えたと言えば、その通りです。自分の好きなように、志望先が選べるのは悪いことではありません。そして組織の側が、それに対応していればよいのですが、きわめて受け身の対応をするのがふつうです。環境に合わせて特別な対策を立ててはいません。

新型コロナの影響で、先行き不安のある業界が目立ってきました。こうした業種の中にも有望な会社はありますし、十分な教育を行う学校もあるはずです。しかし少数派でしょう。多くの組織は選ばれない範疇に入ります。組織の格差が広がりやすくなりました。

    

3 組織の人材育成の姿勢が問われる

成績優秀者というのは、選択肢をたくさん持っています。この一筋につながるといった人は少数です。したがって将来性への不安があれば、そちらに向かう選択は可能性から排除されることでしょう。今後、有望でないからという理由で優秀者が減るのです。

それまで上手くいっていた組織の運営も、環境変化によって適切さにズレが生じてきます。それに気がついて、先回りして改善や改革をしていればよいのですが、そうはならないものです。結果として志望者が減り、学力は下がります。それも急激に、です。

実はここに、チャンスが与えられています。将来性に不安がある分野にやってくる人たちの中には、少数の優秀者とともに、学力はいま一歩でもまじめで職人肌の人が必ず一定数います。全体としても、まじめな人が多いでしょう。学校ならば出席率がよいはずです。

学力が落ちていても、まじめで真摯な人物ならば可能性があります。手間はかかっても、こういう人たちは、先読みしてさっさと転職などしません。学力が急落した集団の中にこそ、人材育成の対象とすべき人物がいるはずです。問われるのは組織側だと思います。

    

    

1 大きく考え、目の前の小さなことから始める

来年になるかと思いますが、プロフェッショナル人材育成についての研修が出来たらいいなあ…と思っています。いま数名のプロになりたいという若者たちから、継続的に連絡が来ているところです。やる気のある若者は、まだたくさんいるということがわかります。

かつて作ったテキストや新規のテキストを組み合わせて、新たなプログラムを作ってみました。そうやって彼らの成果をたしかめているところです。有望な若者が実際に出てきています。方向を与えると、勝手にあれこれ動き出して、何かをつかみはじめました。

自己マネジメントの一種ということになると思いますが、わりあいシンプルなやり方をとっています。それが思ったよりも成果をあげています。「大きく考えることと同時に、目の前の小さなことから始める」という原則です。自分の後悔が含まれています。

    

2 実践できることの列記から課題を見出す

本来なら自分の関わる業界で、どんな立ち位置をとるのが自分の使命なのか…といったことを考えるのがいいのかもしれません。しかし若者がスタートするときには、大きすぎる問いのようです。まずは自分がどうなりたいのか、そのあたりから聞きだします。

とはいえ、このときも正面から「どうなりたいのか?」と聞いても、あまり意味のある答えは出てきません。もう少し具体的なところから、徐々に明確な答えに達するようにしていく必要がありそうです。まず最初に何に取り組むかを考えていくことになります。

すぐに実践できることを列記してみると、その中に、やってみたくなる課題が見つかるものです。それをいくつか実践していくうちに、自分のなりたいイメージが徐々に明確になっていきます。こうした段階を踏んでいくと、その先にプロの姿が見えてくるようです。

     

3 名前指定をしてもらえたケース

実際に、卒業してまだ半年の若者がコレクションに出品して、他社の人から注目され、名前指定で仕事がもらえるようになったケースも出てきました。日々の勉強と実際の業務とがうまくかみ合った結果でしょう。この若者の場合、日々成長していきました。

うまく物事がかみ合って関連していくと、若者の成長というのはおそるべき速さで進むもののようです。このとき勉強したのは、いわゆる標準的な教科書でした。やや古風な伝統的な方法で訓練を進めていきます。そのほうが独学もしやすいのです。

標準的なテキストがある分野の場合、定番教科書的なものをわかりやすく説明した関連書籍が出ています。その場合、独学が可能ですから、勉強の成果を確認するだけで済みました。先のケースでも、独学と課題へのコメントのみで成果をあげることが出来たのです。

このとき標準的なテキストの使い方を決め、理解の検証法も考えておく必要があります。さらに「実行⇒測定⇒比較」での検証を行えば、安定した成長が可能です。標準的な教科書を使用するため、彼らのなすことがややクラシカルに見えて、好印象を与えています。

      

     

1 プロのシンプルな考え方

マーケティングの基本について、新入社員向けに資料を作ったものがありましたので、HPのトップに載せておきました。少し前に作ったものですが、スライドだけではわかりにくいと思って、ささやかな説明を加えたものです。今回、すこし改訂しました。

こういう資料を作るようになったきっかけがあります。マーケティングの本を読んでも、よくわからないという感覚がありました。どんな本をお読みになったのか知りませんが、何人かの人たちから、どう考えても読み間違っているとしか思えない話も聞きました。

マーケティングの本は厚めですし、何となく読み間違いをする人が多いように感じましたし、自分自身でも、しっくりきていませんでした。そんなとき運よく、業界でも知られたマーケティングの専門家から、かなりの長時間にわたってお話をお聞きできました。

そのときのお話が非常に印象的だったので、以前、ブログにもちらっと書きました。お話を聞きながら、「やっぱりこういうことだったか」と思ったものです。とても安心しました。本物のプロは、すごくシンプルに考えているということがわかったからです。

      

2 Who/What/How:誰に・何を・どのように

2016年に【Who/What/How:誰に・何を・どのように…のシンプルで強力な戦略手法】という題名でブログを書いています。ただし、お話をお聞ききしたのは、もう少し前のことでした。「Who/What/How:誰に・何を・どのように」で考えるというのがポイントです。

このブログには書いていませんでしたが、じつはこの手法には、大切なコツがありました。「誰に」をまず最初に考えること、その次に「何を」を考え、最後に「どのように」を考えるという教えでした。この順番が大切だということだったのです。

「誰に」から考えなくてはいけない…というほど、厳格なことではありませんが、「誰に」から考えていくのが基本だ、というお話をしてくださいました。ドラッカーにも、顧客からスタートする発想がありますから、そんなに違和感のある話ではないでしょう。

     

3 「誰に」から考える基本

よほど印象的だったのでしょう。お話を聞いたその直後から、まず「誰に対して働きかけようとしているのか」を考えるようになりました。もしかしたら、漠然とそうしていたのかもしれませんが、あれ以来、意識して「誰」から考えるようになっています。

誰に対してというイメージが出来てくると、その次の「何を提供しようか」を考えるときのヒントになるのです。「誰に」が呼び水になって、「何を」が思いつきやすくなります。そうして「何を」が明確になってきたら、その先に進んでいけるのです。

「誰に向けて、こういうモノやサービスを提供する」というのは基本構想といえます。「どのように提供したらよいか」というのは戦術です。実現する方法、手段といえます。別の観点から言えば、現実化するに足るものでなくては、戦術は意味がありません。

こうした基本的なことを、資料の方には、もう少し詳しく書いておきました。ご興味あるようでしたら、ブログとともにご覧いただくと、参考になるかもしれません。ささやかなアイデアのいくつかは、この方法で生まれたものです。私にとっての基本といえます。