■学力格差の原因:なぜ人材育成のチャンスがあるのか

    

1 将来性への不安が激変を起こす

あるとき突然、学力が全く違った一群の生徒がやってきて、従来のやり方では通用しないということが起こります。もはやめずらしくはないことです。ガクッと下がるのですから驚くはずなのですが、たいてい気がつきません。なぜそんなことになるのでしょうか。

たとえば進学高校ならば、学力が急変することはあまりないはずです。しかし専門学校や大学なら、こうしたことが起こります。平均値がそこまで劇的に下がっていないのに、ある学校や学科に激変が起こるのです。いまのところ、原因が明確に示されていません。

これは学校ばかりではないのです。会社でも起こります。実際にこうした現象は、会社で先に起こっていました。学校、企業だけでなく、その他の組織でも起こりうることです。いくつかの事例と実際に関わった経験からすると、わりあい簡単に理由が思いつきます。

将来性への不安が激変を起こさせるのです。その学校の学科や、その会社の将来性に不安を感じる人達が増えたならば、成績優秀者と言われる人たちはやってこなくなります。不安を感じさせる領域にやってくる人の総数が減り、優秀者が減るということです。

    

2 組織の格差が広がりやすくなってきた

現在、プロフェッショナル人材を育成しても、会社に定着してくれるかわかりません。かつてどうやってプロを育てたらいいのかと苦労していた役員たちも、諦め気味です。やっと育った社員が、いい条件の提示を受けて他社に移って行かれてはお手上げでしょう。

選択肢が増えたと言えば、その通りです。自分の好きなように、志望先が選べるのは悪いことではありません。そして組織の側が、それに対応していればよいのですが、きわめて受け身の対応をするのがふつうです。環境に合わせて特別な対策を立ててはいません。

新型コロナの影響で、先行き不安のある業界が目立ってきました。こうした業種の中にも有望な会社はありますし、十分な教育を行う学校もあるはずです。しかし少数派でしょう。多くの組織は選ばれない範疇に入ります。組織の格差が広がりやすくなりました。

    

3 組織の人材育成の姿勢が問われる

成績優秀者というのは、選択肢をたくさん持っています。この一筋につながるといった人は少数です。したがって将来性への不安があれば、そちらに向かう選択は可能性から排除されることでしょう。今後、有望でないからという理由で優秀者が減るのです。

それまで上手くいっていた組織の運営も、環境変化によって適切さにズレが生じてきます。それに気がついて、先回りして改善や改革をしていればよいのですが、そうはならないものです。結果として志望者が減り、学力は下がります。それも急激に、です。

実はここに、チャンスが与えられています。将来性に不安がある分野にやってくる人たちの中には、少数の優秀者とともに、学力はいま一歩でもまじめで職人肌の人が必ず一定数います。全体としても、まじめな人が多いでしょう。学校ならば出席率がよいはずです。

学力が落ちていても、まじめで真摯な人物ならば可能性があります。手間はかかっても、こういう人たちは、先読みしてさっさと転職などしません。学力が急落した集団の中にこそ、人材育成の対象とすべき人物がいるはずです。問われるのは組織側だと思います。

    

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