1 一番ベーシックな教科書

『星野リゾートの教科書』という本で、星野佳路(ホシノ・ヨシハル)社長は古典的な教科書をきっちり読んで、教科書通りに経営すると語っていました。マイケル・E・ポーターの『競争の戦略』から始まって、コトラーだの、なかなか大変そうな本が並んでいます。

3つのパート「戦略」「マーケティング」「リーダーシップ」の各4章に教科書が示されているのを見て、とても全部読めないという声がありました。これらの本の中で、一番ベースに置かれている本は、おそらく『1分間エンパワーメント』です。

この本の新版『社員の力で最高のチームを作る』では、監訳者として「まえがき」も「あとがき」も星野が書いています。「まえがき」の書き出しは[今の星野リゾートは、この本がなければ存在しなかった。私の経営者人生で最も影響を受けたのが本書だ]です。

     

2 この教科書で成長

『星野リゾートの教科書』のリストにあがっている本の中でも、一番読みやすい本のひとつでしょう。200頁足らずのストーリー仕立ての本です。なぜ、この本が一番基礎になる本、最も影響を受けた本になっているのか、星野自身が語っています。

▼私が家業の温泉旅館を継いだ1990年代、低い社員モチベーション、高い離職率、そして採用難という組織の課題に直面していた。(中略)
本書が、エンパワーメントの方法論を具体的に示していたことを発見した私は、渡りに船とばかりに実際にやってみることにした。 『社員の力で最高のチームを作る』「監訳者まえがき」

その結果は、[その後の星野リゾートの成長は、同書の教えなくしてはあり得なかったと断言できる]と「あとがき」に星野が書いています。[エンパワーメントを成功させるためのコツは、書かれている内容を一言一句、そのまま実践することだ]とのことです。

     

3 4つのパートと「3つの鍵」

目次を見れば、どんな内容の本であるかは、わかるでしょう。4つのパートからなります。Ⅰ「どうすれば会社はよくなるのか」、Ⅱ「エンパワーメントの3つの鍵」、Ⅲ「3つの鍵を実践してみよう」、Ⅳ「成功はすぐそこにある」。

これをみれば「3つの鍵」が大切なのがお分かりになるでしょう。項目がそのまま3つのカギになっています。第1の鍵「すべての社員と情報を共有する」、第2の鍵「境界線によって自立した働き方を促す」、第3の鍵「セルフマネジメント・チームを育てる」。

ストーリー仕立ての本ですから、論文のように書いて行ったら、数頁で済んでしまう内容です。それを理解しやすいようにストーリーにしています。自分でノートにまとめるにしても、この分量ならば、そう苦労なくできるでしょう。そのくらいの内容です。

ポーターの『競争の戦略』を読もうとしても、それはたいへんでしょう。この本を読んでみれば、星野の選択が相性に合うかどうかわかります。星野の推薦がなかったら、この本を読むことはなかったでしょう。きわめてベーシックな内容の本です。