■業務マニュアルの作成:業績との関係

     

1 文書にしておくことは一つの知恵

業務マニュアルのない組織は、かなりあります。いちいち文書にしなくても、業務がきっちりなされているなら、問題ありません。ここでいう「きっちり」というのは、曖昧な言い方に聞こえますが、組織が信頼され、成果を上げているということです。

組織が信頼されるには、ある程度の長さが必要です。成果も一時的でなく、継続してあげていく必要があります。そうなると組織の運営の仕組みが、決まっていないといけません。この点の詰めが甘いと、信頼され成果を上げるという点で不十分なことになります。

何かを詰めていくとき、記述されていることが有利に働くことは間違いないでしょう。明確性を確保するためにも、記述することは必要です。一定以上のことを成す約束をしたとき、私たちは当然のように契約書を作ります。トラブルがないようにするためです。

記述すること、文書にしておくことは、一つの知恵だと言えます。その点で、業務マニュアルを書いておくというのは、おかしなことではありません。ただし、契約の書き方がわからないというのと同様の問題が生じています。たしかに簡単ではありません。

      

2 マニュアルがないことのリスク

業界でトップクラスの会社であっても、業務マニュアルのない組織はあります。よくないという認識をお持ちでした。ささやかな経験ですが、こうしたトップ企業の幹部の方とお話をしたことが何度かあります。全員、まずいですとおっしゃっていました。

しかし作成するのに適任者がいないというのです。社内にいないので、どうしたものかという話になりました。記述できる人がいないのですから、的確なマニュアルなどできるはずありません。ただ危機感は感じられませんでした。別のことが優先されます。

現状はよろしくなくても、それほど危機的な状況ではないという認識です。その後の業績が、まさにそれを反映しています。業績が伸びている会社や、あるいは業績が伸び悩んでいたり株価が3分の1程度になっていても、いずれの会社もびくともしていません。

おそらく心配の仕方、不安の心理のあり方の問題でしょう。契約書なしの約束が不安かどうかということです。業務マニュアルがないのは、自社のビジネスモデルが記述できていないということになります。そのことにリスクや不安を感じるかどうかの問題です。

      

3 業績を上げる業務マニュアル

いまでも業績が伸びている会社では、研修の後に、各部門のリーダーの方々ともお話が出来ました。こういうとき本音が聞けます。そのときある地域で業績を上げていたそのリーダーは、マニュアルに書いても業績が上がるわけではないからねとおっしゃっいました。

まさに、これが業務マニュアルについての標準的な認識でしょう。文書にしても業績が上がらないというならば、あえて書く必要などないのです。実際、かつて作成したマニュアルはもはや読まれていません。作成は無駄でした。なくても困らないのです。

業績が上がらなかったら、業務マニュアルの作成の仕方に問題があるのです。適切に作成がなされるなら、作成過程で必ず業務を見直す箇所が見つかり、効率化につながります。当然、業績にも影響するでしょう。本来、業務マニュアルを作れば業績が上がるのです。

     

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