■ズレた論点:EV車かハイブリッド車か・テスラとトヨタの時価総額

      

1 ポイントのズレた問題提起

少し前に、日経平均株価が4万円を超えました。いまはまた少し下げていますが、あの頃から、ずいぶん景気のよいお話をする人が出てきています。例えば、もはやEV車の将来性は見えてきた、やはりハイブリッド車の方が有望だというお話がありました。

トヨタ自動車が最高益をあげて、テスラの利益と比べ物にならないレベルだとの主張です。でもさ、時価総額はテスラの方が上なんでしょ…という人がいたのに対して、あれは間違いだということでした。この種の話には加わらないことにしています。

ポイントがズレているからです。何が問題になるのかという点に、認識の違いがあるようでした。どういう状況になったら、車に革命的な変化が起きたと言えるのでしょうか。エンジンが、モーターになることよりも、もっと大きな変化が起きようとしています。

     

2 車の革命をもたらすもの

分析を担当していた実務家の先輩たちから、何が問題なのか、何が起きたらパラダイムが変わるのか、それを考えるようにと教えられてきました。その観点からすると、車がEVでもハイブリッドでも、その点で革命的な違いが出てくるとまでは言えないのです。

もっと大きな違いが生じて、まさに車の革命が起こると言えるのは、人が運転しないで、自動運転になるという点でしょう。自動運転で一番進んでいるのが、テスラらしいので、目先の利益とは別に、テスラの時価総額が大きくなっていると説明できます。

目の前の利益ではなくて、どれくらいかかるかわからなくても、投資を回収できる期間、たとえば10年で見た場合に、テスラには可能性があるということです。車の革命、車の再定義といえる状況がやってくるかもしれません。問題は、それがいつかということです。

     

3 先見の明のなさを痛感

自動運転について、技術的に可能になって安全性が確認されたなら、これは極めて大きな影響があるでしょう。しかし、すぐにモノになると思われた技術が、実際に広く使われるようになるまでに、当初の見込みよりも数倍の時間がかかることもあります。

先見の明があると言われた人たちが、一番嫌がったのは、問題提起の間違いでした。ズレていたらアウトだよということです。次に、いつ実現するかの時期を問題にします。専門家というのは、すぐに実現すると考えがちなんだよねと、よくおっしゃっていました。

もはや師匠たちはいなくなってしまいましたが、車の革命をどう見ただろうかと思うことがあります。たまたま妙な話を聞いてしまったために、思い出しました。私はテスラに否定的でしたし、いまもその傾向があります。「いつ」という問題があるからです。

自動運転が実際に可能になるのは、予想に反して早いかもしれません。いまは「何が一番の問題なの」「いつ起こるの」という単純なフレームを思い出しています。自分の予測を記録しておくと、結果は明白ですから言い訳などできません。本当によくハズレます。