■業務の聞き取りについて:ビジネスの基礎になる業務の「見える化」
1 難易度の高い業務の聞き取り
業務の聞き取りなど、簡単に出来ると思っている人が、少数ながらいます。当然のことですが、実際に自分で業務をしていない場合、簡単に聞き取りをして、それをマニュアル化することなどできません。しかし、世の中にはまだ一部に、空想的な発想の人がいます。
たとえば、業務システムを作る場合、システムの要件定義を作る人は、該当する業務について、担当者からの聞き取りが必要です。システムについての知識を持つ人が、社内にいない場合、システム会社に要件定義のコンサルをしてもらうことになります。
このとき、コンサル会社の担当者が業務の聞き取りをしなくてはなりません。しかし、きちんとした聞き取りができる人は少数です。ある特定の業務を専門とするような卓越した人でない限り、適切な聞き取りなどできません。これが現実だということです。
2 数年のトレーニングが必要
ある特定の業界に関して、業務システムの要件定義ができるという人でも、いつでもうまくいくわけではありません、と言います。聞き取る相手のレベルが問われるのです。業務がよくわかっている人でない限り、聞き取っても、あとで問題が起こると言います。
相手が自分たちの仕事についてよく知っていて、それを適切に聞き取りできる人がいたら、業務システムは、うまく構築できるはずです。実際のところ、業務システムの成功率は、それほど高くありません。どう評価するかにもよりますが、成功は少数です。
聞き取りできる人たちは、特定業種について数年の訓練をしています。最低でも2年は必要です。新人の人が、いきなり聞き取りをすることなど、現実的ではありません。さらに言えば、こうやって聞き取りできる人でも、業務マニュアルは作れないのが普通です。
3 効果がある業務マニュアル化
業務システムを構築する場合、「業務の聞き取り能力+システムのリテラシー」が必要となります。業務マニュアルを作る場合、現状の業務を実際の担当者が書き出す場合、「実践する業務の確認+文書の作成能力」があれば、業務マニュアル化ができるでしょう。
しかし、業務を作り替えたり、業務に従事していない領域の業務について、業務マニュアル化しようとすると、急に難易度が高くなります。「業務の聞き取り能力+マネジメントの理解+文書作成能力」が必要です。あんがい面倒なことになります。
業務マニュアルがビジネス文書で一番難易度が高いと言われるのは、こんな事情があるからです。多くの組織で、使える業務マニュアルがないのも仕方ないことかもしれません。逆に言えば、適切な業務マニュアルが作れたら、一気に成果が上がるということです。
業務の「見える化」の効果がありますから、業務の記述ができたら、それを標準にして、改善していくことができます。これができるなら、さらに改革につながる業務の構築もできるようになるはずです。業務の記述は、ビジネスの基礎になると思います。