■英語の7文型をどのように理解するか:文法用語の問題点

      

1 基本7文型が国際標準

英語の基本文型というと5文型であると考えられてきました。ところが若者たちの中には5文型を知らない人もいます。きちんと教えられていないようです。そんな中、いまや国際的には5文型ではなくて、7文型のほうが標準的なようです。

池上嘉彦は『<英文法>を考える』で、現代の英文法書の中でも[文句なしに最も権威がある]「A Comprehensive Grammar of the English Language」において7文型が採用されていることを指摘しています(p.25)。理屈からすれば7文型のほうがよさそうです。

田地野彰も『〈意味順〉英作文のすすめ』で[現在、研究者のあいだで国際的な常識になっている7つの文パターン](p.15)と記しています。大切なことは、これが英語学習者に伝わるかどうかということです。田地野はこの本で、注目すべき工夫をしています。

     

2 意味順で表した7文型

田地野の『〈意味順〉英作文のすすめ』での主張はきわめてシンプルです。英語の文は「誰が」「する(です)」「誰・何」「どこ」「いつ」という意味順に並んでいるとのこと。7文型もこの順だというのです。以下、田地野の説明に番号をつけました。

1.SV    ① She / ② laughed.
2.SVC   ① She / ② became / ③ a doctor.
3.SVO    ① She / ② shut  / ③ the door.
4.SVOO  ① She / ② gave  / ③ me a letter.
5.SVOC  ① She / ② calls   / ③ him Mike
6.SVA   ① She / ② lives           / ④ in Kyoto.
7.SVOA  ① She / ② put   / ③ a book   / ④ on the desk.

7文型を意味順にすると、「①誰、②する(です)、③誰・何、④どこ」になっているという主張です。①は「誰」に限りませんし、4文型③は「誰+何」、5文型③は「誰+誰」というべきでしょう。妙なところはありますが、大枠を知るには役立つかもしれません。

     

3 文法用語は必要

学習者はどう感じるでしょうか。何人かに聞いてみたところ、やはり先に記したところが問題になりました。主語は「誰」だけではない、「誰」と記すよりも「主語」と説明するほうが、わかりやすいとのこと。最小限の文法用語は必要だということです。

田地野も[文の構造を、主語(S)、動詞(V)、目的語(O)、補語(C)、副詞類(A)といった文法用語を使って表すと]…と文法用語を併用していました。学習者向けの説明の場合、厳格さとわかりやすさとのバランスが重要です。もう少し詰めが必要でしょう。

学習者の多くが、「副詞類(A)」を「S・V・O」と同列扱いすることに違和感をもちます。A=「どこに」として、「SV」の次に「SV+どこに」、「SVO」の次に「SVO+どこに」を並べて、各々第2文型、第5文型とすると、わかりやすいと言うのです。

「副詞類(A)」=「どこに」としてよいのか、微妙なところでしょう。しかし「副詞類」という文法用語は事実上、拒絶されています。最小限の文法用語は不可欠であるとはいえ、適切な日本語で表現されなくては、使われません。なかなか大変なことです。

     

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