■操作マニュアルが重要になっている理由:操作性の「見える化」

    

1 操作マニュアルの作成能力

9月に操作マニュアル講座があります。新型コロナに影響を受けて、なんとなくマニュアル改定が停滞していましたが、おそらくここから大きく変わってくるはずです。すでに操作マニュアルに対する評価を改めた組織が、いくつか出てきています。

この変化は、おそらく日本での特徴だと言ってもよいでしょう。なぜ操作マニュアルが、いままで以上に大切になるのか、そこが問題です。何人かの方々には直接お話してきました。人それぞれですが、アッという顔つきをする人もいます。

操作マニュアル自体も大切ですよ、それは否定しませんが、操作マニュアルが作れなかったら、ビジネスが停滞しますよね…というお話です。たいてい「何で?」という感じでした。会社の幹部たちが、自社の操作マニュアルの作成能力を軽視してきたのです。

     

2 1人のプロデューサーに権限を与える体制

日本の会社と世界のトップ企業で、何が一番違うでしょうか? そんな話を振ってみると、スピードというお答えがかなりあります。しかしもっと根本のところでの違いがあります。本物のプロ個人に自由にやってもらうという体制がないということです。

スイスの「タグ・ホイヤー」のジャック・ホイヤーは、大前研一から「セイコーの再生を頼まれたらどうするか」と聞かれて、「私を雇えばよい」と答えました。圧倒的なプロフェッショナルの1人に権限を与えれば、それで大きく組織や製品が変わってきます。

▼「ブランドを維持するためには、1人のプロデューサーがいればよい。ところが、それをセイコーは組織でやろうとする。セイコーに時計を作る職人は大勢いるが、ブランド・マネージメントの職人はいない」 『クオリティ国家という戦略』p.57

      

3 操作性の「見える化」:組織的な対応

お話する方々の組織はメーカーでもIT企業でも、いわゆる高級ブランドというよりも実質重視の製品を提供しています。デザインは一人に依頼できますが、製品そのものは1人のプロデューサーに依存するわけにはいきません。組織でやる方式を採用しています。

ならば着実な方法がなくてはいけません。何が大切でしょうか? 機能のすばらしさだけでは競争に勝てません。操作性が大切です。リーダーは当然のように、担当者に操作性を重視しろと言います。しかし権限も与えずに、言うだけです。これでは負けます。

なぜ組織的な対応をしないのでしょうか。こういう話をすると、組織的な対応というのは何なのかという話になります。これが操作マニュアルの作成能力と、どうかかわるのでしょうか。不思議そうに聞いているうちに、わかる人はアッという顔つきになります。

操作マニュアルは、操作性を「見える化」したものです。それを検証してみれば、操作性の判定が適切にできるようになります。さっさと操作マニュアルが作れれば、操作性の議論は単純な比較で勝負がつくのです。まだこうしたことが常識になっていません。

      

◆追記 操作マニュアル作成講座【2023年9月25日】はこちらです。