■プロになるための勉強法:米長邦雄『碁敵が泣いて口惜しがる本』から
1 まずは挨拶の仕方を学ぶ
将棋も囲碁もよくわからないのですが、米長邦雄の『碁敵が泣いて口惜しがる本』を、勉強法の本として大切にしています。ご存知の通り、米長は将棋で名人になった人です。碁も「アマチュアでは超一流の域にある」と藤沢秀行が実力を保証しています。
米長は[アマチュアにとっては]という条件を付けて、[オーソドックスなスタイルを身につけるほうが、碁はうんとやさしくなり、上達もそれだけ早くなる](p.82)と書きました。ゴルフの上達と[同じ理屈でしょう]というのです。どういうことでしょうか。
まずは「礼儀作法のマニュアル」「挨拶の仕方」を学ぶことです。そうでないと、論語[「思って学ばざれば」の罪]を犯すことになります。これは[腕力に少々自信のある][人が陥る落とし穴]です(p.58)。しかし当然、挨拶レベルではプロになれません。
2 専門家の実戦譜を短期集中的に学ぶ
挨拶の仕方というのは、碁でいえば「定石」ということになります。米長は[まずプロの実戦譜を並べて“定石”を覚えたのです](p.17)。[高段のプロにあっても、この打ち碁を並べるという方法は、実は最も大切な勉強法](p.60)ですから、必要なことでした。
[独創性というのは、基礎を踏まえた上で成立するものです。デッサンの能力もないのに、ピカソやシャガールのような絵を描こうとしても、無理](p.123)でしょう。[模倣というのは、何事においてもその初期にあっては、実に大切なこと](p.124)です。
だから[専門家の実戦譜から学びます](p.124)。[出来るだけ早く、数多く並べる]こと[数をこなす方が大切です](p.125)。[短期集中がいい][寝ても覚めても][という状態を一カ月続け]て100局をこなせば、基礎ができると米長は言います(p.131)。
3 解答を見ないで自分で最善の答えを出す
さらにプロの四段になるなら、[二つの勉強法を、徹底して実践すれば、誠に簡単]とのこと。[ひとつは、詰め将棋を解くことです。それも、絶対に答えを見てはいけません。独力で正解を導くこと](p.89)。これは[集中力と根気を養うためのもの](p.91)です。
[もう一つは、新聞の将棋欄を][見て、その局面での次の一手を考える](p.91)、こちらは[平均すると一〇分か十五分くらいしか考えません](p.92)とのこと。詰め将棋の難問の場合、何日もかけて考えるのです。両者の勉強法には質の違いがあります。
▼「次の一手」といった問題集を買ってきて読破する人が、よくいます。問題をちらっと見て、ほんの二~三分考えてみるが、すぐに解答欄を見てしまう。そして、こういった局面でプロはこう打つのかと感心して、それで終わり。(p.117)
これでは実力がつきません。「最善手はどれか、絶対に見つけてやる」という心構えで答えを出しても、「問題外の手ばかり」ということを[いかに多く長く続けられるか、これが上達の秘訣です](pp..118-119)。自分の専門ではどうか、考える必要があります。