■データと気分:チャイナ経済をめぐって
1 流れが変わった2009年
リーマンショック後の2009年に、中国政府は4兆元(日本円で60兆円)の財政出動をしました。世界にとっても、中国にとってもインパクトのある金額でしたから、これが世界的な金融危機を救ったという評価もなされています。中国は、世界の資金を集めました。
しかし当時、チャイナ経済崩壊論が主張されてもいましたし、これで中国が圧倒的に強くなるとみていた人は、ごく少数派だったことを覚えています。いまから見れば、あそこが一つのターニングポイントでした。こういうことは、なかなか見えないものです。
たまたまその頃お会いした大手商社の幹部だった方に、チャイナ経済の今後についてお聞きしたことがありました。対中貿易のサポートをしていた人でしたから、流れが見ていたようです。これから圧倒的に強くなると、きっぱり言っていました。
2 信頼できるデータの欠如
チャイナ経済悲観論があるときでしたから、この種の言説に対して、どう思うかを確認してみると、この人は、全くあり得ないと言って苦笑するばかりです。出遅れた日本企業が対中投資を進めている中でのことですから、当然の反応でしょう。
中国の巨大な財政出動で、資金の流れが大きく変わったのです。ところが上海の株式市場は反応しませんでした。株価チャートを見ていただけばわかります。いったん上昇した後、2014年前半まで株価は上がるよりも、若干下がり気味で推移しているのです。
その後、2014年の後半から2015年の前半まで上海株式市場は急上昇し、そこから暴落しています。財政出動の効果はどのくらい継続したのか、よくわかりません。信頼できるデータがなくて、ある種の気分と言うべきものに支配されることになりました。
3 今後はデータが大切
2023年に対中投資が急減したことが報じられて、チャイナ経済の悲観論が強くなっています。資金が細ったら、いままでのようなエンジンはもうかかりません。長期で見れば、もう勝負は決まりました。しかし信頼できるデータがないので、気分に支配されます。
信頼できるデータがあって、そこにダメな数字が出てきたら、誰もがそれを否定できません。どうしたらよいのかを議論するしかなくなります。しかし国家の場合、巨大な存在ですから、データに良い悪いが混在していることが自然でしょう。難しいことです。
では気分は、どんなだったのでしょうか。留学生たちを見ていれば、ある程度わかります。2015年の株価の急落以降、浮かれているような気分はもはや見られません。当初は、またよくなるという気分が感じられましたが、それもなくなってきました。
経済の高度成長は終わったということでしょう。対中投資が減ったのも、その反映とも考えられます。いままでが異例だったということです。しかしそうなると、今後はデータが大切になります。正確なデータが出てくるのか、悲観的な気分で見るしかありません。