■ユニクロ柳井正の経営論のエッセンス:『プロフェッショナルマネジャー』の解説から

     

1 柳井正の「最高の教科書」

ハロルド・ジェニーンの『プロフェッショナルマネジャー』は1985年に日本語訳が出版されたとのこと。その年、ユニクロの柳井正はこの本を読んでいます。2004年に再び出版された時には、柳井の「はじめに」と「付録」がつけられていました。

この本は柳井の「最高の教科書」だとうたわれています。[この本が何冊売れたのかは知らないが、僕が山口県で唯一の読者だと思っている。それほど衝撃を受けた](p.4)ということでした。何が、そんなに衝撃的だったのでしょうか。

▼ジェニーン氏の経営論を読んで、僕の経営概念は180度変わった。「経営はまず結論ありき」で、最終的に何を求めて経営いていくかを決め、そこから逆算して、結論に至る方法を考えられる限り考え、いいと思う順からまず実行する。そして、実行の足跡と結論を常に比較し、修正していく。「そうすれば、大概なことはうまくいくんだよ」というジェニーン氏のメッセージを、この本から僕は確かに受け取った気がした。 p.4

      

2 ジェニーン経営論のエッセンス

ジェニーンの「三行の経営論」というものが、第二章の冒頭に掲げられています。「本を読む時は、始めから終わりへと読む/ビジネスの経営はそれとは逆だ。/終わりから始めて、そこへ到達するためにできる限りのことをするのだ。」(p.34)というものです。

柳井は[この経営論は、自分が考えていた経営概念とは全く異なるものだった。僕は、カジュアルウエアの郊外型店をやったら面白いかもしれないという漠然とした思いを、ゼロから初めて一つ一つ形にしていくことが経営だと考えていた](p.4)というのでした。

ジェニーンは最後の14章に書いています。[これは本書の中でいちばん短くて、たぶんいちばん重要な章である]。1頁しかありません(p.308)。[実績のみが実在である][実績こそきみの実在だ][マネジャーとは“実績をもたらす人間”だ]とあります。

     

3 大成功したときに出会った本

柳井がジェニーンのこの本を見出して、これを最高の教科書にしたのは、それまでに成功を経験していたからでしょう。1972年、23歳の時[父親から資本金600万円の小郡商事株式会社の実印と通帳を黙って手渡された]柳井は、成功を重ねていました。

1984年に「ユニーク・クロージング・ウエアハウス」をオープンさせています。[「低価格のカジュアルウエアが週刊誌のように気軽に、セルフサービスで買える店」をコンセプトにした]と言うのです(p.3)。もはや経営のプロと言ってよい水準になっていました。

このユニクロの第一号店が大成功をおさめ、翌年、二店をオープンさせています。その年に、[運命を変える一冊に出合った]のです。成功していたからこそ、[「僕の経営は甘い」「経営するとはこれだ」](p.4)と思えたのでしょう。

2004年に柳井は、この本から学んだエッセンスを、[いつか達成できるかもしれない最高の最終目標を理想として掲げることで、そこに使命感のようなものが発生する。それが自分の仕事をする上での原動力になる](『プロの勉強法』p.55)と語っていました。

      

        

    

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