■英語の構造と日本語の構造:『日本人のための英語学習法』
1 動詞と動作主
日本語について、松井力也は『日本人のための英語学習法』で、日本語は[「は」「を」などの助詞を用いることによって結びつけられ、同時にそれらがそれぞれの語の関係を説明してい]て、[重要な部分を助詞に依存しています](p.43)と書いています。
さらに[日本語の動詞は、常に動作主と関係づけられたうえでしか成立しない概念なので、たとえ主語が省略されていても、常に動作主が意識されています]。ということは[動作主もいないのに動作だけが存在するわけがないと考え]ることになるでしょう。
「存在するに決まっている主語」ならば省略可能です。英語の場合なら[動詞は、動作主という前提を持たないまま認識されることの可能な、行為そのものを指示する概念]なので、[逐一、動作主が明示されなければ文を成さない]ことになります(p.48)。
2 並置とイコール
さらに松井によれば、「I teach.」の場合、「I」と「teach」とが[並置し][I(私)がteach(教えるという行為)とイコールであるということを指示する]とのこと。[自分が人にものを教える立場にある存在だということを表している](p.47)というのです。
どうも、このあたりがよくわかりません。英語では[同格的な並置が、その基本的な骨格を成しています]とのこと。「同格的な並置」になると「teach」が「教える立場にある存在」になって、「自分(私)」=「教える立場にある存在」になるのでしょうか。
「This is a pen.」ならば、「This」=「a pen」と言えなくもありませんが、「is」はどうなるのでしょうか。さらに第2文型の場合、「S=C」になるとは言いにくい例文もあります。「同格的な並置」という概念でどこまで説明できるのか微妙なところです。
3 英文法の解説本として出色
この本を読み始めて、ここにあったかと思い出しました。初めに記した[動詞は、常に動作主と関係づけられた]概念になる日本語と、[動作主という前提を持たないまま認識されることの可能な、行為そのものを指示する概念]になる英語との対比についてです。
日本語の場合、動作だけでなくて現象も存在も状態も評価も、すべてその主体が意識されていると言えるかもしれません。しかしここでの説明にまだ確信が持てなくて、そのままになっていました。イコールの話など、注目すべき点については、まだ保留しています。
いくつかの説明に、これは違うなあと思って、しばらく放置していましたが、もう一度きちんと読むべき本だと、改めて思いました。この本にはわれわれを刺激する解説があります。そのまま使えるかどうかは別のことですが、ヒントにはなるはずです。
日本語の文法について考えるとき、日本語の文法書を読むのは当然でしょう。しかし基本のところで考えが違うので、たいていお手上げになっていました。かえって英文法について書かれた本に魅力があります。その中でも出色の本だと思ってご紹介しました。