■図解の方法:定量化と定性化

    

1 図解と思考の整理

先週末に図解作成講座を行いました。大勢のご参加いただき感謝しています。今回、講義のはじめのほうで、講座の案内に「思考の整理」とあった点をご質問くださった方がいました。図解について考えるとき、なぜ思考の整理が関わってくるのかということです。

図解をするときに、向いているものと向いていないものがあります。作図をしようとすれば、簡単に出来るものがある一方、どう作図したらよいのか、簡単にいきそうにないものもあるはずです。例えば感情を表す図をどう作ったらよいでしょうか。

感情を表す図を作ること自体、不可能ではないでしょう。実際、プロが作った図の中には、感情をうまく表したものもあります。しかし簡単にまねできるようなものではありません。図に向いているかどうか、考える必要があります。思考の整理は必要です。

       

2 定量化できるデータがある場合

感情を表すことが図に向いていないということを、もう少し詰めていくと、どういうことになるでしょうか。主観的なものを表すことが図解は苦手だと言ってよいかもしれません。客観的なもの、定量化できるものは、図解に向いていると考えることが出来ます。

グラフの場合、定量化したものを図にすることが原則です。作図に先立って、定量化されたデータが必要になります。それがない場合、定量化の方法を考えることが必要です。従来、定量化できなかったものでも、定量化が可能になると客観的なデータが使えます。

定量化できるかどうかを考えることは大切なことです。たとえば血中のホルモン量が検出できるようになったため、心臓や腎臓などの臓器の動きがホルモン量から推定できるようになっています。これなどは定量化によって実際の成果を上げた事例です。

      

3 フロー図が使える場合

ただし定量化されたデータがあるから、作図すべしということにはなりません。図にすることが効果的かどうかが問題です。図にしたために頭が整理されて、パッとわかるようになってこそ、効果があると言えます。作図の効果についても考えなくてはなりません。

当然、定量化が向いていない分野もあります。たとえば戦略を考える場合です。ある種のストーリーで考えることになりますから、定量化は向いていません。定性的に考えることになります。この場合、概念を並べてプロセスを示す図解にすることが出来ます。

プロセスを示す図解で典型的なものは、業務フローでしょう。業務のプロセスをシンプルに示す図があると、業務の流れが見えてきます。全体の大きな流れを把握する場合、プロセスを適切に示した図が作れると、全体構造を理解するのに役立つことでしょう。

定性的なものの場合、フロー図は定番の形式と言えます。この場合、並べられる各概念が明確なものでないと効果がありません。概念の明確性が不可欠な条件だということです。定量化されたものと定性化されたものでは、作図の方法が違うということになります。