■マネジメントにおける「コンセプト」

    

1 重要なコンセプトの確立

マネジメントの用語として、コンセプトが一般的になったかどうか微妙ですが、重要な用語であることは間違いありません。堺屋太一が『夢を実現する力』のなかで、「プロデュースの10段階」の2番目に「コンセプトの確立」をあげていました。

▼プロデュースの10段階
[1] 目的の明確化━━━━全員で共有
[2] コンセプトの確立━━事業の全体概念、テーマを混同するな
[3] ストーリーを描く━━具体的な全体イメージを語る
[4] シンボルを立てる━━全員にコンセプトを知らせる
[5] 全体計画を練る━━━規模、日程、行事イメージ、主要施設

以上が5段階までです。ここまでを詰めておかないと、その先には進めません。目的を明確化し、その次にコンセプトが来ます。たとえば「沖縄返還の成功=沖縄の人口を減らさないこと」が目的、コンセプトは「産業を興すこと=海洋リゾート沖縄」です。

       

2 目的を達成するための行動指針

コンセプトの話をすると、よくわからないということになりがちです。事例が少ないと、たしかにわかりにくいかもしれません。野地秩嘉『成功者が実践する「小さなコンセプト」』を見ると、たしかにコンセプトという概念がわかりにくいのに気づきます。

「小さなコンセプト」というのは野地によると[長期間守る、自分との約束]であり[行動指針]だということです(p.4)。野地の定義は「コンセプト」そのものではありませんから、いわゆるコンセプトとは違うものがありますが、違いも含めて参考になります。

たとえば伊那食品の塚越寛の項では「会社の目的は全社員の幸せ」とありますから、マネジメントの概念で言えば「目的」であって、コンセプトではありません。目的達成の指針がコンセプトに当たります。目的を達成するために、これで行こうというものです。

      

3 コンセプトの具体例

では、この本にある「小さなコンセプト」で、いわゆるマネジメントのコンセプトになり得るものは、どんな言葉でしょうか。それは目的達成の指針になりうる言葉ということが条件になります。以下の6つの言葉が心に響いてきました。

・情報をもとに「自分で考える力」を鍛える:鈴木敏文(セブン&アイ)
・地域産業になれば後継者はやってくる:木内博一(和郷園)
・わかりやすい生活感あふれる日本語で伝える:牧伸二(漫談家)

・相手に合わせる能力を身につけてこそクリエイター:山下達郎(ミュージシャン)
・提案のポイントは一つに絞る:秋元康(作詞家)
・街で出会って自分が信じたものを商品にする:田中秀子(博水社)

これらはすべて、どうしたらよいのかが明確です。「自分で分析できる能力を身につける/地域産業に徹する/適切な日本語を見出す/相手の意向に応える/提案のポイントを一つに絞る/自分が信じられるものを見つけて商品化する」…という指針になります。

      

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