■体系化とノウハウ

1 再現性のないことがビジネスでの原則

シンプルにまとめることは、とても大切なことです。シンプルにまとめることが出来たなら、しばしば使えるものになります。ただし気をつけないと、間違いを犯すリスクがある点も忘れることが出来ません。説明できる領域が限定されるということです。

世の中のすべてをひっくるめて、シンプルに説明できることは一番の基礎理論になるでしょう。引力が働いているといった原理はそれに当たります。しかし多くの場合、シンプルにまとめられるものは、すべての領域に妥当しません。経験からもわかるでしょう。

科学の実験のように再現性がないことはビジネスでの原則です。イノベーションを起こしたいからといって、確実にイノベーションが起こせるようにする理論などないでしょう。確率が高くなる方法さえ、どれだけ期待できることなのか、不安になります。

      

2 原則とはある種の仕組み

実務の世界ならば、うまくいく確率が高ければ、それはすぐれた仕組みだと評価されるはずです。その仕組みがシンプルであるならば、シンプルにまとまっていると評価してよいでしょう。実際、成果の上がる仕組みは、たいていシンプルなものです。

「こういうとき、こうすればうまくいく」という形式がシンプルな仕組みにはよく見られます。「こうすれば」の部分がシンプルであるということです。構造がシンプルであるなら、たしかに実践しやすいですから、使える仕組みだということになります。

こうやって使えるものであると、「こうすれば」の部分が、もっと別な場面にも使える場合がでてくるはずです。ある程度広い領域に妥当する仕組みが生まれてくる可能性があります。その組織での原則に当たるものは、こうしたある種の仕組みでしょう。

      

3 すべてを説明しきれないという認識

これは使えるという経験から、その仕組みの適用領域が拡大していって、ある一定以上を超えた場合、体系化がなされたということになります。こうした体系化という言い方は、厳格なものではありません。ひとまずの体系化です。いい加減なものだともいえます。

ところが、こうしたいい加減さが大切です。かなりの場面で妥当するものでも、どこまで妥当するのか明確になっていません。様子を見ながら、微調整が必要です。そうなると、うまく運用するためには、ある種のノウハウが必要になってきます。

言われた通りに杓子定規に当てはめてしまうと、逆に失敗の可能性が高くなるでしょう。ある種の矛盾のようにも見えます。しかし体系化を、ひとまずの体系化だとするならば、体系化をすすめることと、すべてを体系的に説明できないこととは矛盾しません。

もっと俗にいえば、意識してシンプル化する必要があるとともに、シンプル化したものなら、その取り扱いに関するノウハウが必要になるということです。体系化からはみ出るもの、すべてを説明しきれないものがあるという認識はノウハウの前提になっています。

   

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