■マネジメントの基本とインテグリティ(integrity)

      

1 沖縄返還を成功とみなす基準

マネジメントの教科書には、定番のものがないようです。アメリカでは日本ほど、ドラッカーが読まれていない…とよく聞きます。しかしマネジメントの大枠は決まっていると言ってもよいでしょう。最初に「目的、ミッション」を問うということです。

最初の段階で、何をするのか、何のためにするのかを明確にすること。その次の段階で、どうやってそれを達成するかということが問われます。堺屋太一は沖縄返還のときに、佐藤栄作首相から沖縄の人口を減らさないようにと言われました(『夢を実現する力』)。

沖縄返還の成功が狙いです。それを明確にすると、沖縄の人口が減らないことになります。これが目的でした。そのための対策が必要です。堺屋は、沖縄に産業がないと人口が維持できないと考えました。「そのためにどうすべきか」が次のステップになります。

     

2 コンセプトは「海洋リゾート沖縄」

沖縄返還を成功とすること、そのために沖縄の人口が減らないようにすることが目的です。そのために沖縄に産業を興すこと、具体的にどうしたらよいのかが問題になります。「こうすればよい」という構想、ビジョンが求められるのが次のステップです。

堺屋は沖縄の電力や水などのインフラ事情からいって、製造業は不利だと判断します。観光業が一番有望だと考えて、観光業の専門家に話を聞きに行きました。こうした準備の上で、「海洋リゾート沖縄」をコンセプトとし、沖縄海洋博を準備していきます。

プロデュースのマネジメントでは、第1が目的を設定すること、第2にコンセプトを決めることが求められます。第3が、目的とコンセプトを基にしてストーリーを描くことです。コンセプトというのはビジョン、ストーリーとは戦略にあたるものといえます。

     

3 ブレることのない人が「integrity」のある人

どうしたいという良心に基づいた主観が目的、これを客観化して具体化したのが目標です。海洋リゾート沖縄を実現するためのストーリー・戦略が決定したら、10年で観光客を10倍にするという目標が明確になります。沖縄海洋博もこの考えに沿って進みました。

ところが堺屋は「愛・地球博」のプロデュースから途中で降りています。目的が明確にならなかったからだそうです。『夢を実現する力』にあります。目的もコンセプトも明確にならなくてはいけませんし、それを決めたらブレてはいけないというのが原則です。

ドラッカーをはじめとした人たちが、成果を上げるために「integrity」というものを最重視しています。当然のことでしょう。目的が不明確だったり、ビジョンがこうだ、コンセプトはこうだと言っておきながら、それがブレるようでは、成果は上がりません。

目的、ビジョン、コンセプトを決める場合、明確であることと、ブレないように作ることが最も重要なことです。こうしたものを作ることがマネジメントの基本と言えます。こうした基本においてブレない人が「integrity」のある人だということになるでしょう。