■『プロフェッショナルの条件』を読む:その1

 

1 簡単に理解できないドラッカーの言葉

小さな勉強会で、マネジメントの勉強をしたいという話が出ました。以前、『もしドラ』を読んだことがあるという人がいたので、その中の言葉をピックアップして読んでいこうかというアイデアが出てきました。この本には41個のドラッカーの言葉があります。

『もしドラ』の中から自分が気になる言葉を選んで、自分なりの考えを語っていこうかという話になってきました。しかし、これはダメでした。切り取った言葉をいきなり読もうとしても、どうも見当はずれの話になります。ドラッカーを甘く見過ぎていたのです。

ドラッカー自身が、自分の本は高校生では読めない、大学生でも難しいだろうとインタビューで語っていました。そんなに簡単に読めないのですが、何となくわかった気になるのもたしかです。これはドラッカーの凄さでもあります。しかし勉強にはなりません。

2 『エッセンシャル版 経営者の条件』

それならば…ということで、『プロフェッショナルの条件』を読もうかということになりました。マネジメントの勉強なんてしたことないという人たちですから、当然、この本も簡単ではありません。しかしズレた読みであっても、何となく分かるものがあります。

『プロフェッショナルの条件』を編集した上田惇生先生に、この本の話が出たときに「中核は『エッセンシャル版 経営者の条件』ですね」と申し上げたら、「そう、そうなの」というお答えでした。この本の中に『経営者の条件』のすべての章が入っています。

『エッセンシャル版 経営者の条件』という風に読むなら、やはり『経営者の条件』の章立ての順に読むべきでしょう。その点、『プロフェッショナルの条件』では『経営者の条件』の章立てがバラバラになっています。これをもとの順番で読むのがよさそうです

上田先生に『経営者の条件』の章立て通りがいいのでは…と申しあげたとき、「エッセンシャル版」として読むなら、そうだろうねということでした。『プロフェッショナルの条件』のあとがきを見ると、上田先生はまた別の読み方を提案していたのがわかります。

3 『プロフェッショナルの条件』の中核部分

この本は5つのパートからなります。Prat1「いま世界に何が起こっているか」、Parat2「働くことの意味が変わった」、Part3「自らをマネジメントする」、Part4「意思決定のための基礎知識」、Part5「自己実現への挑戦」。上田流のまとめ方です。

▼パート3「自らをマネジメントする」は、本書の中核部分であって、まさに一流の仕事が出来るようになるための秘訣である。ここでは、そのために身につけるべきことを明らかにした。 p.257

パート3(pp..97~144)の50ページ程度の部分を、上田先生の並べた順番に読んでいくことによってドラッカーのエッセンスが読み取れるようになっています。この部分を優先して丁寧に読んでいくことも可能です。ドラッカーの意志にも反しません。

▼成果を上げるには、いくつかの習慣的な能力を身につけなければなりません。
第一が、時間をマネジメントすることです。
第二が、貢献に焦点を合わせることです。
第三が、強みを築くことです。
第四が、重要なことに集中することです。
第五が、的確に意思決定を行うことです。
私はこれらのことを『経営者の条件』で指摘しました。
それから10年以上が経ち、少し考えが変わりました。重要性のウエイトが若干変わったのです。また、項目も一つ増えて、五つから六つになりました。
第六が、成果を評価することです。自ら目標を立て、自らを評価することです。
これらが、成果を上げるための鍵となる六つの習慣的な能力です。
(『われわれはいかに働きどう生きるべきか』 ドラッカー:上田惇生 訳)

パート3は4つの章からなり、1章が『創生の時』から、2章が『明日を支配するもの』から、3章が『経営者の条件』から第2章、4章が『経営者の条件』から第5章…という構成になっています。この選択と並べ方を見ると、上田先生のすごさがわかるのです。

   

This entry was posted in マネジメント. Bookmark the permalink.