■「計画におけるグレシャムの法則」を考えた業務の構築

     

1 重要な人間性の原則

記録をすると、客観的な判断ができるという話を前回書きました。これは実際に効果をあげています。新しいこと、臨機応変のことの場合、習慣化しないと、なかなか行動に移しにくいという人間性を考えた仕組みでした。こうした人間性の原則は重要です。

こうした原則は、組織の大きな基盤に影響を与えます。ルーティンの仕事をきちんとやっているだけでは、組織が弱くなるのです。思い当たることがあることでしょう。新しいことよりも、ルーティンの方が取り組みやすいのです。成果も見えやすいでしょう。

ただし、その成果は目先の成果です。長期で考えると、新しいこと、創造的なことをやらないとじょじょに、そのリスクが組織に波及してくることになるでしょう。創造的な活動をするために、積極的な仕組みを作っておかないと、リスクが生じるのです。

     

2 H.A.サイモン「計画におけるグレシャムの法則」

たいていのリーダーが、この種の原則的な考え方をよく知っています。それなのに、仕組みにしておかないために、組織がそういう方向で動かない現実があるのです。「計画におけるグレシャムの法則」の話をご存知の方もいるでしょう。

J.G.マーチとH.A.サイモンによる共著『オーガニゼーションズ』で示されたものです。意外にも『オーガニゼーションズ』に言及なしに語られています。仕方ない面もあるのです。記述も難しく、1958年出版ということもあって現実世界ともかなり違います。

しかし「計画におけるグレシャムの法則」は重要概念です。沼上幹『組織戦略の考え方』の説明を引けば、[日々ルーチンな仕事に追われている人は、ルーチンな仕事の処理に埋没して長期的な展望とか革新的な解決策とかを考えなくなってしまう](p.29)ことです。

       

3 対策が不可欠な「計画におけるグレシャムの法則」

ルーティンの仕事が創造的な仕事を追い出してしまうのです。悪貨が良貨を駆逐するグレシャムの法則と同じように、「計画」を立てるときに、この法則がそのままあてはまってしまうと困ります。その対策が必要だということです。

グーグルで20%ルールというのがありました。業務時間のうちの20%分を個人プロジェクトに振り向けができるルールです。これによってGmailのサービスが生まれたとのことでした。これも「計画におけるグレシャムの法則」対策のルールといえます。

現在、グーグルでも20%ルールがそのまま適応になっていないようですが、そのときどきで対策の仕組みが必要です。誰が、何を、どのようにしたら、「計画におけるグレシャムの法則」の対策が取れるのか、この点を考えて業務を組み立てる必要があります。