■文章チェック講座を終えて:センテンスの分析のむずかしさ

      

1 標準的なスタイルでの記述

文章チェックの講義を行ってきました。ビジネスで使う日本語の文章をどうチェックしていったらよいのか、事例をあげながら確認していく講義です。全体の構成をどうするかということと、センテンスごとにどうチェックするかということになります。

マクロ的に見ると、自説の示し方をどうするかということが問題です。よく言われるように、結論をはじめに書くというのが原則になります。この点、よくお判りでしょう。具体例を使って、全体の構成がどうなっているのかを確認すれば、わかるはずです。

何度か練習すれば、標準的な構成で文章を書くことはできます。一つのスタイルで書けるようになることが大切です。それができれば、別のスタイルでもたいてい書けるようになります。一定期間練習するのはたいへんですが、その気になれば可能なことです。

     

2 感覚でなく意識的な確認

マクロ的なチェックというのは、基本的なことですし、ここがズレていたらもうどうにもなりません。理解して実践してみると、意外なくらい妙な文章構成になっていることがあります。何となく感覚でやっていたことを意識的に確認していくことが大切です。

意識的に確認するには、確認の方法と確認の基準が問題になります。これが明確なものであるならば、その方法と基準で自己チェックできるでしょう。チェックされた方も、自分なりの納得が得られる基準であれば、効果があります。汎用性がある基準が必要です。

この点、一文一文をミクロ的にチェックしているときに問題になります。センテンスを分析するときに使われるのは、文法的な分析方法です。これが中核になります。しかし日本語にはまだ使える文法が確立していません。そのため苦労することになります。

      

3 センテンスの分析方法

清水幾太郎が『論文の書き方』で、フランスの小学生が文法的分析をしている話を書いていました。小学生でも分析できるくらいシンプルな文法があるということです。日本語では、それができません。清水自身、外国語を勉強してそれを学んだということです。

センテンスがどういう構成になっているのかを考える場合、主辞と述辞を押さえないといけません。本来、主語と述語といえばよいはずですが、通説では「は」のつく言葉は主題であり、「が」のつく言葉は主格ということです。主格を主語という場合があります。

通説の文法と、学校で習ったはずの文法が違いますし、学校ではもう文法を教えていませんから、主語・述語自体がよくわからなくなっている様子でした。センテンスごとの分析が簡単にできてしまう人がいる一方、多数があまり得意でないということです。

神は細部に宿ると言います。センテンスの分析によって、文章全体の評価ができることがあるのですが、それが十分にできませんでした。説明の仕方がまだ十分ではなかったようです。小学生でも使えるものでないと、効果がありません。これが一番の反省点です。