■要素の細分化と「見える化」

   

1 問題の要因発見に有効な細分化

物事を分析するときに、要素を細分化していくアプローチは、現在でもしばしば使われています。要素を細分化することの効果には、どんなものがあるでしょうか。おそらく一番基本的なものは、問題に対して関係ある対象であるか否かを決定する機能です。

全体を見るのではなくて、全体の一部分を選択して、その対象を分析するアプローチをとるため、対象の「選択と集中」が可能になります。その結果、この要素は関係がある、これは関係がないと区分できるため、問題の要因が見出しやすくなるということです。

関係のあるものと関係のないものの線引きをするときに、正確な線引きをするためには、細分化を進めていくことになります。関係の有無を判定するためには、対象を「〇×」で決められるところまで細分化すれば、関係の領域が明確になってくるはずです。

      

2 細分化の弱点

一方で、細分化していくアプローチには弱点もあります。全体が見えにくくなるという点です。半分の赤ん坊というのはあり得ないというドラッカーの言葉もありました。組み合わせによる影響も無視できません。細分化すると、見えなくなることがあるのです。

部分を磨き上げれば、全体も磨きがかかると期待するのは当然ではあります。ところが合成の誤謬という言葉で示されるように、個々の期待が積み重なっていくと、かえって全体として別方向に行くことがあるはずです。皮肉な結果が生じることはありえます。

良かれと思って始めたものが、全体として悪い結果を生むことなど、ないと思いたいところです。しかし例えば、個々人の節約が健全であっても、それが拡がり過ぎれば、生産者も販売者も困ります。だから結果から考えていくアプローチも必要になるのです。

     

3 コンセプトからのアプローチ

期待する成果を明確にして、そこからどうすべきかを考えるアプローチは、要素を細分化して分析するアプローチとは大きく違います。こうなりたいという状況を「見える化」することからスタートするのです。存在しないものの姿を、明確にすることになります。

このように現実に先立って、あるべき姿を創造する行為がコンセプト作りの段階です。ここでは分析は出来ません。代わりに統合がなされます。ここはこうだ、この点についてはこうなるように…と、部分が全体に統合され、簡潔で明確な姿が描かれていくのです。

堺屋太一は沖縄返還に際して、沖縄の人口が減らない施策をとるようにと命じられて、沖縄に産業を興すことが必要だと考えました。条件に合う産業は観光業だとターゲットを絞り、「海洋リゾート沖縄」というコンセプトを作ります。そこからスタートしました。

現状を変えるために行動を起こすとき、中核になるのはコンセプトです。ゴールを「見える化」したら、今度は到達までのプロセスを明らかにしていきます。その過程で検証が必要になれば、分析の登場です。分析は行動における補助機能というべきものでしょう。

     

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