■ニーズ分析について:西堀栄三郎の方法

     

1 「それは君、簡単や」

西堀栄三郎は技術コンサルタントとして、戦後日本に絶大な影響を与えました。唐津一は『新版 石橋を叩けば渡れない。』の巻末に[どんな困難があっても「それは君、簡単や」の一言で事を進めていく、このようなスーパーマン]と書いていました。

西堀には魅力的な本がいつくかあります。『南極越冬記』は西堀のメモに基づいて梅棹忠夫が執筆したもの、『石橋を叩けば渡れない。』は講演を編集したものです。『創造力』(『ものづくり道』=『技士道 十五ヶ条』)が最後の著書となりました。

日本人の書いたマネジメントの本の中でも西堀のものは最高位にあると思います。体系立てては書かれていませんが、それはわれわれがなすべきことです。何かを創造するときにどうすべきなのかを体系化しようとする場合に、西堀の考えが基本になるでしょう。

     

2 ニーズの細分化と具体化

『石橋を叩けば渡れない。』について、以前に書いたことがありました(■日本人によるマネジメントの古典:西堀栄三郎『石橋を叩けば渡れない』)。最後の『創造力』も、無視できない本です(再編集した『ものづくり道』がおそらく一番読みやすい版)。

西堀はこの本で、ニーズの分析について語っています。まず最初に[ニーズを細分化して、カギになっている条件を探し出す]のです。たとえば製品の軽量化がポイントだとわかったら、どこが重いかを調べて、そこを[軽い材料に置き換え](p.31)ます。

▼問題を具体的に絞っていって、問題の要求に見合う知恵とか着想が出やすいようにする。思うに創造性のある人というのは、上手にニーズを細分化し、具体化できる人のことをいうのではないだろうか。 p.32 『ものづくり道』

     

3 新しいことをする勇気

なぜニーズの分析をするかと言えば、[創造性が生まれるためには、知識がニーズに結びつくことが必要](p.30)だからです。ここでいうニーズとは[社会や企業の要求とか問題の類](pp..30-31)であり、顧客の要求も自分の探求心からのものも含まれています。

うまい着想が出なかったら、[再度、他のやり方でニーズの分析をし直すこと]、あるいは細分化したニーズを[寝ても覚めても忘れないこと](p.32)が必要です。さらに[着想をモノにするためには非常識に考えること]が(p.33)不可欠になります。

西堀は南極越冬時に、石油の輸送用に氷でパイプを作り、限られた条件下で真空管の修理もしました。[いかに険しい道であっても、新しいことをする勇気をもちたい](p.34)ということです。ニーズの分析というシンプルで効果的な方法が、その基礎にありました。

      

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