■「創造性は人間の本性」:西堀栄三郎『ものづくり道』再論

    

1 西堀栄三郎を知らないリーダー

先週末に書いた西堀栄三郎のニーズ分析について、IT業界のリーダーの方から、よくわからなかったので、もっと丁寧に書いてほしいと言われました。ああ時代は変わっていくんだなあ…と思います。西堀栄三郎を知らないリーダーも多いことでしょう。

西堀は戦後の品質管理の指導で知られています。技術コンサルとして、製鉄や繊維産業など、世界的な活躍をする会社を指導して成果を上げてきたのです。IT業界のかつてのリーダーたちは、西堀について特別な存在として扱っていました。

それでもニーズ分析については、ご存じない方がいらしたのです。それで『ものづくり道』のご案内のつもりで簡単にふれました。「1 オリジナリティのつくり方」にあります。西堀は「創造性は人間の本性」だという認識でいます。これが基本です。

    

2 心理状態が問題

西堀は[創造性を阻もうとする言動]は[「お前は人間ではない」といっているに等しい](p.18)と記しています。どうせ創造性を発揮するのなら、きっちりやればいいのだというわけです。そこで「強いニーズと知識の関係」が問題になります。

強いニーズとは[「何とかしなければならない」という切迫感]のある課題です。これが「知識」と結びついて創造性が生まれます。圧倒的な製品やサービスが日本から出てこないのは、知識以上に切迫感がないからだと、西堀は考えているようなのです。

常識的な発想で、圧倒的なものなど創造できない、非常識に考えて圧倒すべしということでした。初版のまえがきでも[心理状態が問題である]と記しています(p.334)。何とか目的を達成するぞという本気さが重要であり、そのときの手段は自由なのです。

       

3 ニーズの絞り込みと具体案

何かをなそうとするとき、一番のキモを探すことがニーズ分析になります。ニーズを細分化して、自分たちのなすべきことの本質を絞り込んでいくのです。たとえば南極では、燃料の石油が必要でした。「欲しいのは石油であって、ドラム缶ではない」のです。

石油をパイプで運べばよいと気がつきます。しかし南極にパイプなどありません。氷を使って作ればいいと西堀は言い出しました。しかし折れないパイプにする必要があります。そうだ、繊維を入れようと言ったところ、医療用の包帯があります…となったのです。

燃料である石油を安全に効率的に運ぶことがポイントでした。パイプ⇒折れないパイプ⇒繊維を入れた氷のパイプ⇒折れないように接続したパイプで給油…となったのです。ニーズの本質を絞り込むことによって、西堀は常識ではありえない達成をしてきました。

頭を働かせるときに、この発想は使えます。成功事例があった場合、この事例で仕事に役立つものは何か、応用できることはあるか、何に応用するのがいいか、どう応用したらよいか…など、ニーズが絞り込まれていくほどに具体案が出てくるのです。

    

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