■OJTマニュアルの目的と形式:業務マニュアルとの違い

     

1 マニュアルの目的の違い

業務マニュアルとOJTやトレーニング用のマニュアルには、形式的に大きな違いがあります。それは目的の違いから生じるものです。両者を文書にして比較してみれば、両者の違いが明確にわかります。見分けがつかないということは、まずありません。

業務マニュアルの目的は、業務を標準化して、業務に従事する人に示すことにあります。したがって、マニュアルを利用する人は、業務に従事する人です。各人がすべてを読む必要がない場合もありますが、必要部分には必要な記述がなされています。

OJTマニュアルの場合、その目的が違います。利用者は指導する側です。成果をあげるために、どういう風に教えていくのがよいのか、それを検討してマニュアルにしています。指導する側が、どう指導するかを考えて、このマニュアルを作って実践するのです。

      

2 記録しておいて検証するための文書

指導する人が、OJTマニュアルを作ることは別に珍しくはありません。現状では、そちらが通常のことだと言えます。しかし組織として、教えるのがうまいということにしようとしたら、OJTマニュアルが必要になってくるのです。

教え方がうまいというのは、どんな点なのか、記録しておいて検証するために、OJTマニュアルという文書が大切な存在になります。業務マニュアルのように、内容をきっちり記述しなくてはいけないものではありません。逆に、それは好ましくないのです。

その場の状況に応じて、臨機応変に指導できなくては、意味がありません。しかし、守るべき基準もあります。これだけは習得できるようにしておかなくてはいけないとか、この順番で教えたほうが効果的だということです。

      

3 属人的になりがちな指導

OJTマニュアルの性格からお分かりになると思いますが、きわめてシンプルで量の少ないものになります。作るのも、そんなに苦労してはいけません。苦労しなくても、これで間違いないと言える程度にわかった領域でないと、うまく教えられないからです。

逆に、成果をあげたOJTのプログラムがあれば、教える方もレベルが上がっていきます。教えることによって、自分の理解も深まることはよくあることです。組織が、質の高いOJTマニュアルを持っておくことは、不可欠なことだと言ってよいでしょう。

現状を見ると、まだOJTマニュアルを作成している組織はごく少数です。ごく一部の指導者は独自の仕組みをつくり上げて、それにそった指導をして成果をあげています。しかし記述されないため、属人的になりがちです。もったいないことだと思います。

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