■読解力を向上させるために訓練法の考案を

     

1 紙の新聞の消滅

もはやビジネス人でも多くの人が紙の新聞を読まなくなりました。古新聞が貴重になっています。先日、新聞紙が必要だといわれて、読むためでないのに新聞を買いに行った人がいました。その勉強会に来た人は、どなたも新聞を取っていなかったのです。

ところが近くの駅の売店に新聞がなくて、先生に確認したそうです。もったいないから古新聞といっただけで、週刊誌でも大丈夫だとのこと。ペーパータオルでもよいですということでした。教わる方も、もうすぐ高齢者に入る人たちです。

それでもその人たちの中に、紙の新聞を読んだことがないという人はいません。若者の場合、紙の新聞を読んだことがないのです。紙の本を読む量も減ったためか、活字を読む力が落ちました。読み取り能力の低下は、計算の問題をするとき明らかになります。

       

2 計算問題の日本語がネック

留学生が、日本語の計算問題で立ち止まることがあります。計算それ自体ができないのではなくて、問題文の日本語の意味がよくわからないということがめずらしくありません。これは慣れることによって、徐々に解消されていきます。

問題文の記述の仕方には、ある種のパターンがありますから、何度も何度も同じ種類の問題を解いているうちに、この言い方ならこういうことだと、わかってくるのです。留学生の場合、自然にそうなります。きちんとその方向に誘導すれば、きわめて効果的です。

日本人の場合でも、計算問題の日本語の意味が分かりにくいということがあります。日本人の方が、留学生よりも日本語の読解レベルが高くなるのは当然のことではありますが、これは程度の問題です。読解レベルが低い人がかなり出てきているのです。

     

3 ポイントは指導側

計算問題のように、読み間違えたら不正解になるか、意味不明で計算ができなくなりますから、読解力の不足が明確になります。読解問題の点数も下がっているため、平均すると、読解も計算も落ちているということになるでしょう。

それではレポートを書く場合には、どうでしょうか。予想できるはずです。指導なしにレポートを提出してもらうと、かなりまずいことになります。訓練が足らないのです。では基礎から教えられる人はいるでしょうか。ふつうの学校にはたぶん、いません。

冒頭に書いた勉強会に来ている人たちは、どちらかといえばエリートの部類に入る人たちでした。この人たちに指導をお願いできるでしょうか。お願いしてみればわかります。おそらく強い拒絶にあうでしょう。レベル低下は若者だけではありません。

留学生が日本語に慣れて能力を伸ばすのは自然です。日本人の場合もかなりの程度、慣れの問題でしょう。基礎訓練からやればよいのです。ポイントは訓練法を工夫して、教えられる人を養成することです。これは学校だけでなくビジネスの世界の問題でもあります。

     

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