■数字のセンスについて:新型コロナの感染者数を事例にして

     

1 理系は数字に強いのか

文系、理系という分け方に、ときどき戸惑いを覚えることがあります。文系だろうが理系だろうが、経済指標を見るのは当たり前ですし、企業の決算から始まって、ビジネスでは数字がわからなかったら、どうにもなりません。理科系の人が数字に強いでしょうか。

最近になって、どうやら文系理系とは別に、数字に対するセンスというべきものがあることに気がつきました。例えば、新型コロナの感染者数を毎日見ていると、そこから何らかのトレンドを見出してしまう人たちがいます。逆に全く気づかない人もいるようです。

ピークがいつで、今後の感染者がどうなるか、予測が次々当たる人たちがいます。当然のことですが、お互いに分析法など話しません。それでも結果は同じです。見ているところがたいてい同じになります。グラフを見ていると、モデルが見えてくるということです。

      

2 第5波のピークアウトが見えたか

新型コロナの例で言えば、一部の人たちの間で、8月23日に第5波のピークアウトがほぼ確認できたね…という話が出てきました。これなど、当たり前すぎる話ですが、「何で?」という人がいます。理科系であっても、わからない人はわからないのです。

毎週最多の日の感染者数をつなげて折れ線グラフにしていくこと、もう一つは、毎週最少の日の感染者数を折れ線グラフにすることで、ピークアウトが見えます。毎週最多のグラフと最少のグラフがともに下向きになったら、ピークアウトだと判断するのです。

第5波で確認できたのが8月23日でした。すでに最多のグラフが下向きトレンドになっていたのです。したがって月曜日の感染者数を見て、前週の最少の日(たいてい月曜日)よりも感染者が少なくなっていたら、最多と最少のグラフがともに下向きになります。

そうしたことが見える人なら、ピークの日を中心にして感染者数のグラフの前後がほとんど対照的になるのにも気づくはずです。対称性を基準にすれば、波の前のボトムからピークまでの期間を見ることによって、ピークから波がおさまるまでの期間がわかります。

      

3 モデル化と図解の効果

もう少し長いトレンドを見ると、第4波までの波と第5波での違いにも気がつくかもしれません。波の前のボトムと波の後のボトムがどうなっていたかを確認してみると、どうでしょうか。第4波までは、波の前よりも波の後の感染者数が多かったはずです。

ところが第5波の場合、波の前の最少感染者数を、波の後が下回っています。長期トレンドで見れば、拡大期が過ぎて収束に向かっている可能性に気づくはずです。新型コロナに限らず他の事例からしても、この場合、トレンド変化の確率が高いと思われます。

これらは数学的な計算ではありませんが、数字の変化を見る感覚の問題です。最近になって、こんなこと当り前だと思っていましたが、気づかなかった人が多数派であることを知りました。どうしてわかるのかと聞かれるうちに、ああ…と思いました。

業務を見るときに標準化モデルをつくろうとすること、数字の変化を図で見ることがクセになっているのです。構造やモデルを見出そうとすれば、数量の推定が出来るようになってきますし、推定の検証も可能になります。観察の問題が関わるように思います。