■日本語の文法分析の基礎:助詞「は・が・を・に・で」

    

1 小学生が文法分析をするフランス

日本語を外国語のように扱うように主張したのは清水幾太郎でした。『論文の書き方』の中で、フランスの事例をあげています。フランスでは小学生の時に「フランス語」という授業があって、そこで[既に小学校で文章の文法的分析を教えている]のです。

清水自身は日本語で文法的分析を行ったわけではなくて、外国語との格闘の中で、センテンスを文法的に分析することを身につけていったということでした。外国語が一定レベルを超えた人なら、その外国語を手がかりに日本語の文法構造を感じ取れるのでしょう。

しかしそれが出来るのは、かなりの年齢になっていなくてはなりません。小学校のころから、センテンスを分析できるスキルを身につけておいた方が圧倒的に有利になることは間違いないように思います。日本語ではまだ、分析するときの文法が確立していません。

     

2 文を作るときに不可欠な助詞

現在日本では、脳にある言語野に障碍が起きて言葉が不自由になった人達の症状を「失語症」と呼んでいます。この人たちの症状でしばしば見られるのが、助詞を使うのが不自由になるケースです。日本語では助詞が使えないと、言葉がつなげていけません。

文を成立させるためには、モノ・コト(誰・何・どこ・いつ)を表す言葉があったうえに、その言葉がどんな役割を果たすのかを示す助詞が必要です。助詞が使えなくなると、文をつくるときに苦労します。これは小学1年生の場合も同様です。

日本語の場合、モノ・コトの名前を憶えて、語順を身につけただけでは、まだ適切な文になりません。会話なら「飛行機、見えた」と言ってもおかしくありませんが、文として記述する場合には、こうはいかなくなります。助詞をつけていかなくてはなりません。

逆に言うと、助詞の使い方が適切になると、文が作れるようになっていきます。失語症の人たちとのお付き合いが10年ありましたから、言語野の発達が未熟な小学生の場合にも適応できるだろうと思いました。これを利用して、作文の指導をしたことがあります。

     

3 文を構成する要素を示す目印「は・が・を・に・で」

小学生1年生に作文を教えるとき、絵を見てそれを文にするのは、しばしば行われていることです。図解にあるたくさんの絵を見て、そこから文の対象を選び出すことから始まります。並んでいる絵の中から、文の主役になるものを選択するということです。

文を作るときに最初にすることは、センテンスの主役の決定です。ゴリラの絵がいいとなったら、「これ!」と言うでしょう。こちらが「ゴリラ…」と言えば、「ゴリラが」と言うはずです。主役に選ばれたものを表す言葉には、助詞「が」が接続します。

ゴリラがバナナをもっていて、まさに食べようとしている様子が描かれていた絵だったならば、どうでしょうか。こちらが「ゴリラ…」と言えば「ゴリラが!」と言い、「バナナ…」と続けると、「わかった!」「ゴリラがバナナを食べている」と言うはずです。

適切な助詞を接続させることが文をつくるときの基礎になっています。文法的分析というのは、これを反対から行うことです。文を構成する要素を確認するとき、助詞がその手がかりを与えてくれます。中心となる助詞は「は・が・を・に・で」の5つです。

    

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