■目的と目標が必要な理由:目的と目標の違い

     

1 目標と手段で考える発想

先日、若手のリーダーとの勉強会で、なぜ目的と目標が違うのかという話になりました。目的と目標は、ときどき混乱した使われ方をします。ビジネス書でも、「目的は…」と書いてある後に、言い換えの表現が「この目標のために…」となっていたりするのです。

ジャック・ウェルチの場合、『リアルライフMBA』で、ミッションとは[組織が目指すところをきっちりと指し示すもの]と書いていました(p.18)。ところが、[ミッションが会社の目標であるなら、行動は、そこにたどりつく手段](p.23)だと書いてあります。

目標と手段という二段階の発想です。目標という客観基準を置いて、組織が目指すゴールを示し、その実現のための手段となる行動を考えよということになります。ここには、目的がありません。「目的→目標→手段」という発想ではないということです。

      

2 「かくあるべし」の検証が必要

哲学は、「かくあるべし」ということを示してきました。併せて、そのための手段も示すことになります。ここでは目的と手段という二段階の発想です。哲学でいう「かくあるべし」というのは、客観基準ではなくて、「あるべき姿」ということになります。

「かくあるべし」という価値基準に基づいて、各人が「あるべき姿」を描き、その実現のために、どうすれば良いかが決まってくるでしょう。このとき、何のためにやるのかが明確でないと、目的と手段の取り違いが起きます。あるべき姿になることが重要です。

ただし目的だけでは、あるべき姿になったかどうかを、簡単に検証できません。そのとき定量的な水準を示すことができれば、客観的な基準で判断することが可能になります。定量的な水準は、「かくあるべし」という価値が入らない客観基準です。

     

3 社会の中で生きていく存在

主観的な判断よりも、客観的な基準による判断の方が安定性があるのはいうまでもありません。科学の登場によって、各人の考える価値基準を排除して、客観基準で考えることができるようになりました。「かくあるべし」とはどんな水準であるかを考える発想です。

目標と手段で考える場合、達成したか否かが明確になります。ビジネスの場合、こうした明確さが重要なことです。しかし、定量化された基準でけでは、何のためにこれをめざすのかが示されません。ここでは利益を上げることが目的だという前提があります。

ビジネスにおいて、目標と手段だけで考えるということは、利益を上げることが目的だということです。社会的な存在である組織が、自分達の利益だけを考えていたら、危うくなります。組織が社会で存立していくためには、公益性も考えなくてはなりません。

組織は社会の中で生きていく存在です。社会における自分達の存在価値を示す必要があります。何のために組織を作ったのかということです。その目的があるからこそ、目的を達成できているかを検証する目標が活きてきます。目的と目標が不可欠な理由です。