■PDCAが回らない理由:目標管理との関係
1 PDCAという言葉
PDCAを回せという言い方がなされます。先日ビジネス人の方々に、PDCAという言葉を知っていますかと確認してみたら、全員ご存じのようでした。plan、do、check、actionの略だということまで含めてのことです。一番身近なマネジメント用語かもしれません。
日本的経営のキーワードのように扱われたこともありました。plan、do、checkが動詞で、actionだけ名詞なのは都合が悪いので、actという言い方もなされています。しかし、checkにはストップのニュアンスもあるらしくて、微妙な用語のようです。
デミングセミナーの担当者だった水野滋の発案とも言われる用語が広く使われるようになっています。PDCAがうまく回る組織と、うまく回ってない組織があるとも言われてきました。なぜPDCAがうまく回ったり、うまく回らなかったりするのでしょうか。
2 目標管理の方法
講義のときに、目標管理の図を示して、知っているのか確認したところ、こちらは見たことがないということでした。「実行⇒測定⇒比較」のプロセスを回していくものです。実行して、その結果を測定して、目標と比較をするフィードバックの手法を言います。
実行するためには準備や計画が必要ですし、業務の仕組みを整備する必要があります。測定するには、測定方法、測定基準が確立してなくてはなりません。比較をするためには、目標が設定されている必要があります。こういう前提が必要です。
目標を設定して、それを管理するための基本といえます。組織には目的があるはずですが、それを具体的な目標にしなくては、管理がうまくいきません。目標が測定可能でなかったら、比較ができませんから、測定方法や測定基準が明確であることが必要です。
3 マネジメントの基礎
マネジメントの基本が整っている場合、目標管理の下で、各人が工夫を凝らしていくことが求められます。日本的経営の一番重要な用語となったのは、おそらく「カイゼン」でしょう。日本の組織が、改善の仕組みを経営に組み込んだ点が重要でした。
機能としての改善が経営の仕組みになった場合、カタカナで「カイゼン」と表記されます。PDCAが「計画・実行・測定・改善」の意味になっているのも、特徴的でしょう。「action」に改善の意味を持たせるのは和製英語という感じがします。
いずれにしても、目標管理がきちんとできている組織ならば、カイゼンの仕組みは回ります。基礎になる目標管理の仕組みが整備されているのなら、PDCAが回るということです。PDCAが回るか回らないかは、目標管理ができているかどうかだということになります。
野地秩嘉『企画書は1行』で、トヨタ自動車の張富士夫が[カイゼンばかりが取り上げられますが、カイゼンより前にまず作業の『標準化』があるんです](p.24)と、語っていました。業務を標準化して目標管理をすることは、マネジメントの基礎だといえます。