■生成AIの技術進歩と人間の役割:自分の頭を使うことが求められる時代

      

1 生成AIの利用が前提の時代

読売新聞オンラインに面白い記事(3月6日付)がありました。「中学1年生250人の半数超、理科の課題で同じ間違い」というものです。課題に対して、生成AIの「誤答」を書き写したとのことでした。すでに起こった未来と言えるかもしれません。

20歳前後の教え子たちは、課題やレポートに生成AIを利用することは、あまりないように思います。チャットGPTが公開され利用できるようになったのが2022年の11月とのことです。リーダーの方々から質問をいただくようになったのは昨年8月頃からでした。

報道にあった中学生たちは、スマートフォンを利用するようになって、まっ先に生成AIを利用してみたのかもしれません。多くの生徒が当然のように利用しています。このまま急速な進歩が続いていけば、生成AIの利用が前提の時代になることでしょう。

      

2 機械化に匹敵するインパクト

AIの技術が進歩すれば、文章で答えを出してくれるようになるのですから、画期的なことです。それまで人間が手足を使って働いていたものが、機械を使ってより高度な作業が出来るようになったことと比べても、決して小さくないインパクトになります。

歴史的に見ると、人間は機械をずっと良きものと認識してきたわけではありません。しかし上手に利用することを考えることによって、経済成長がはじまります。機械を味方につけたということです。生成AIに対しても味方につける方法が必要になるでしょう。

機械を使いこなすために、機械を使うスキルの習得が必要になりました。さらに機械を利用してもらうためにはニーズを探って、使いやすい機械を開発することが求められるようになります。生成AIも、その方向に進んでいく可能性が高いでしょう。

      

3 創造性・哲学が求められる時代

生成AIを使う場合に、機械を使うスキルに該当するものとは、どんなものになるのか、まだよくはわかりません。しかし基礎になるものは人間の読解力、文章の分析能力になることは間違いないでしょう。人間が生成したAIの文章を検証できなくては困ります。

先の記事で専門家が、「医学的な情報についてAIを妄信することは、現時点では非常に危険」と指摘していました。生命や健康にかかわることは、まだリスクがありすぎます。その点では、中学生が課題に使って失敗するのは、まだましなことでした。

生成AIは、定型的なこと、正解があること、それが検証できること、こうした条件に適った分野から優先的に利用されていくようになるはずです。これとは逆に、創造性があって、価値観が絡んで評価が分かれるものの利用は限定されるものとみられます。

どうやら現在主張されていることと、あまり変わらないのかもしれません。AIが広く利用される時代でも、創造性を発揮せよ、哲学をもて…ということになるということです。いっそう自分の頭を使うことが求められる時代になるだろう、という予感がします。

       

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