■連想性の学習による「自己組織化」:松本元の講義から

     

1 脳とコンピューターの学習法の違い

AIが急速な発達・発展を遂げています。文章の要約を自動生成するなど、ビジネスにも大きな影響があることは、もはや間違いないでしょう。機械化によって、いわゆる肉体労働が根底から変わったように、大きな変化をもたらすことは間違いありません。

あらゆる分野で、人間と機械との関係が問題になってくることでしょう。では、人間の脳とコンピュータの違いは、どういう点にあるのでしょうか。もうかなり以前から問題になってきたことです。この領域には、松本元というすぐれた研究者がいました。

松本は『心とコンピュータ』に収められた講演で、[脳とコンピュータの一番大きな違いは≪学習性≫です](p.144)と語っています。学習の仕方が、脳とコンピュータでは違っていて、脳の場合、自動的に学習するということです。どういうことでしょうか。

      

2 学習による「自己組織化」

松本は言います。[こうして日本語で話をしていますが、規則や文法を習ったからしゃべれるのではなくて、日本語をしゃべる環境に生まれ育ってきたから]であり、[人間はそういう環境の中に置かれると、話すための回路が自動的にできてしまいます](p.145)。

回路を自分で作ったり、[プログラムがあって人から教わるのではありません]。[自然に神経回路が出来てくる]、つまり[脳の神経回路が学習によって自己組織化される]ということ、俗にいう「人は触れるものに似る」というになります(p.145)。

これは脳が外部からの[情報を強い刺激として感じたときに、その情報を処理するための回路を固定化]していくことです。[これが学習したことを記憶すること]ですから、[脳は学習し記憶して、神経回路が作られてゆく]ということになります(p.146)。

     

3 連想による関連付け

このメカニズムで[いちばん大事な点は、脳の学習が≪連想≫であるということ]であると松本は語ります。コンピュータの[記憶の出し入れは番地を指定することによって行]う方式ですが、脳は番地指定でなくて、[事柄の関係付け]を行うのです(p.146)。

このとき[時間的な関係を連想]したり、[場所的な連想、カテゴリーの連想など、ある事柄とある事柄を関係付けて学習し、固定化」することになります。[連想性の学習]が行われるのです。単一の関連づけではなくて、複数の関連づけになります(p.146)。

たとえば電話でたった一言「もしもし」と言われれば、誰なのか、どんな事情なのかといったことが、つぎつぎ頭に浮かんでくるはずです。このとき[情報の順序付けとして時間]が使われます。時間の流れの豊かさとは、[関連付けの豊かさ]です(p.148)。

[脳はすべてが記憶庫]ですから、データだけでなく[情報を処理する回路]、[情報処理・表現能力も記憶と考えるべきです]。これらを脳は連想性によって[言動として出力]しています(p.150)。松本元の講義は1994年でした。いまだに頼りにしています。

       

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