■西堀栄三郎の創造性開発:目的と制約

      

1 目的は絶対

西堀栄三郎は『石橋を叩けば渡れない』で、目的と制約ということを、創造性に関連させて説明しています。タクシーに乗って「八時までに東京駅に行ってくれ」と言うとき、[東京駅へ行くというのは“目的”]であり、目的は[絶対なのです](p.149)。

一方、[八時までというのは制約]になります。工夫の余地があるのは、こちらの制約にかかわることです。時間を守るために、どの道を通っていけばよいのか、考える必要があります。制約をクリアするための手段が問題となっているのです。

西堀は、[創造性というのは、目的そのものにあるのではなく、むしろ、その目的を実現する手段]のほうに[創造性を発揮する余地があります]と語っています。[目的には自由はありません。これは絶対です](p.148)とのこと。言われてみれば、その通りです。

    

2 意欲を買う

西堀の場合、「何をしてくれ」という形式で決められるのが目的であり、「どのように」というのが手段です。どのようにしたらよいのかを考えることが、創造性の発揮になります。「労働を買う」「労働を売る」のではなくて、「意欲を買う」ということです。

意欲がないと、創造性が出てきませんから、会社と労働者との間で売り買いするものは、意欲でなくてはなりません。この前提に立つと、[創造性開発に必要な条件として、いわゆる「成功の味をしめた経験」というものが、一番重要]になります(p.145)。

あの時、こうやって成功したという経験があると、調子が乗ってくるのです。[創造性開発をするような場合には、当人をして調子に乗せることが非常に大切なモチベーション](p.146)となるのです。「調子に乗る」ということは、悪い意味にはなりません。

     

3 自信論を超越した勇気

こうやって西堀の考えを見てみると、目的がどういう概念であるかが見えてきます。そうすることが必要だと思わせるものでなくてはなりません。実践する人たちが、これはやらなくてはならない、やりましょうと思えるものであることが達成の条件になります。

そういう目的であるならば、もはや目的は動かせません。目的は絶対になります。どうやって達成するかという点が問題です。この時、やれるぞという気持ちが不可欠になります。調子に乗ってる、うぬぼれていると言われようと、やろうという意欲が大切です。

▼いままでやらなかったことをやるとか、今まで誰もが解決しえなかったことを決行しようというためには、このような自信論を超越して、やろう! ということにならなければなりません。それを「勇気」というものでありましょう。 p.179 新版『石橋を叩けば渡れない』

リーダーは、意欲を発揮させて目的を達成するように誘導する人、つまり目標管理をする人です。では西堀流の目標とはどうなるでしょうか。目的に定量的な制約条件を付けたもの、【目的「東京駅に行く」+制約「8時まで」】の形式になるものと考えられます。

       

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