■閾値の発想:飛躍のために必要な仕掛けについて

       

1 反応がおこるのに必要な水準

閾値(イキチ/シキイチ)という用語があります。反応が起こるのに必要な水準のことです。障碍者の会にいたときに、薬の効き方に、これほど個人差があるのかと思ったことがあります。わずかな薬で十分なほど反応がある人がいる一方、反応がない場合がありました。

ある人にとって、ある薬がとても効果的だったからといって、別の人に同じ条件で効果が表れるとは言えません。反応が悪いときに、薬の量を増やせばよいのか、別の薬にするのがよいのか、どちらを選べばよいかについて標準化するのは、簡単ではないでしょう。

業務についても、同じことが言えるのではないかと思います。一定以上のエネルギーの集中がないと、効果がなかなか現れてこないことがあります。もっとエネルギーを投入すべきなのか、別のアプローチをとるべきなのか、簡単には決めかねることがあるはずです。

     

2 どんな項目に・どんな水準が必要か

業務について考えるとき、閾値の発想を持つことが大切なことになります。実際のところ、重々わかっていますという人がたくさんいるはずなのです。ところが、何かのときに、ああそうでしたねということになります。あまり意識していないのです。

ある地点を超えてから急速に効果が出てくることがあることを知っておけば、成果が出るまでの過程で失望しなくて済みます。なんらかの調整が可能かもしれないという発想に立つならば、何がどのくらいになれば、成果が出てくるのかが見えてくるかもしれません。

検証の際に閾値を意識して、「どんな項目に関して」「どんな水準まで達しないといけないのか」を問うことが、次の手を考えるときの重要な手掛かりになるはずです。このときの指標が正しければ、そのまま現状把握のための評価基準にもなります。

     

3 成果を感じ取ること

閾値という発想を活かすためには、やはり日々の状況をいかに正確に評価できるかということが問題になってくるでしょう。これには訓練が必要かもしれません。優れた療法士の人達は、リハビリテーションの成果に対して敏感で、かなり正確に評価します。

リハビリテーションというのは、成果が出るまでに長時間かかるとみられがちです。たしかに大きな成果になるまでには、長い期間が必要かもしれません。しかし適切な訓練ならば、1日行えば1日分の成果が表れます。それを感じ取れるかどうかが問題です。

適切な訓練を積み重ねていくと、ある一定のところまで行くと質的な転換が起こり、新しい訓練が可能になって、さらなる効果を上げていくことができます。わずかな変化を感じ取って、その先に起こる転換を読み取れたなら、間違いなく成果を上げるでしょう。

おそらく業務も同じです。一日一日の成果を積み重ねていくこととともに、飛躍を起こす仕掛けを見出すことが必要になります。飛躍するということは、あるところで質的な転換が起こるということです。飛躍をもたらすには、閾値の発想が不可欠といえるでしょう。

      

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