■池田真朗『民法への招待』の「学習アドバイス」

    

1 経済原論と民法

池田真朗の『民法への招待』がすでに第6版になっていました。先日出てきた改訂版をみると2000年の出版になっています。民法の解説部分を読むのなら、新しい版が必要でしょう。しかし私が必要なのは最終章「学習アドバイス」の部分のみでした。

20頁ほどの分量ですが、大切にしている文章です。経済原論と民法を比較すると[経済原論というのは、人間の行動の分析から生まれた科学であり][「仮想現実のシミュレーション」]であることを前提にして、問題が提示される科目といえます。

民法の場合、[すべての指標を使って、現実の法律関係を把握することに努めなければならない。当事者の意思によるルール作りを最優先し、それが明らかでない場合に民法のルールを用いる]という科目です。[個別紛争状態の設定と解決]が問われます。

     

2 民法のルールと価値基準

ここで問題になるのは、民法のルールです。[民法のルールは、世の中で行われているルールを一般化しているものが多いのだが、といっても、そこには当然、「かくあるべき」という規範意識が含まれている]という点が大切になります。

つまり[当事者の意思に任せるといっても、反社会的なルールの形成は許されない]ということです。こうした規範性の要素は、[経済原論には原則として含まれない要素]だということになります。そうなると民法の価値基準はどうなるでしょうか。

[「民法には、この考え方に従って処理すればすべてが明快に整理できるという考え方ないし価値基準はないのですか」という質問]があるとのこと。民法には[そのようなものはないし、そのようなものを考えるのは間違い]だというのが池田の答えです。

    

3 民法の理想と目指すもの

民法の場合、[何か絶対的な尺度に頼ってそれで物事を理解していこうとする]発想とは違っています。[あえて言えば、抽象的だが、公平・自由・平等というのが民法の理想]、[意思自治、私的自治というものを目指すのが民法の基本的な姿勢]です。

取引を重視して、動的安全たる「取引の安全」を価値基準とするのは[間違いである]。民法の目指すのは[動的安全と静的安全の最も望ましい調和の状態]です。そのとき条文の趣旨から類推適用される場面もあるでしょう。一方、利益衡量には注意が必要です。

利益衡量は[最後の手段]として使い、その場合でも信義則違反や権利濫用などの[一般条項を条文根拠としてされるべきもの]ということになります。以上から、[制度趣旨にさかのぼって勉強してみてほしい]と池田は言うのです。

公平・自由・平等を理想とし、意思自治・知的自治を目指す。民法のルールを適用するときには制度趣旨を基準にすること。こうした原則に沿って個別の問題を明確化し、解決していくのです。民法についての池田の一筆書きは、別分野でも参考になるでしょう。

     

民法への招待〔第6版〕

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