■留学生からみえるベトナムの状況:補助線になる川島博之の論考

     

1 止まってしまった学力向上

留学生の様子について書いたところ、ベトナム人と中国人についてのコメントがありました。ベトナム人については、今後もう少し様子を見ていきたいと思っています。もしかしたら、いままでのトレンドが変わったかなという気がしているためです。

六、七年ほど前から、ベトナムからの留学生が増えてきました。そして彼らを見ながら、これはすごいことが起こっているかもしれないと感じていたのです。2020年にコロナがまん延するまでの数年間で、驚くほど基礎学力が上向いていました。

しかしコロナ後から、こうした学力向上のトレンドがストップした感じがします。残念なことです。毎年レベルアップし続けていたら、あと5年あれば平均点で中国人と並ぶことになると思いました。実際には、中国人との学力差が広がった感じがします。

       

2 経済状況の変化

ベトナム経済が急速に発展していることは、多くの報道を通じて知っていました。実際のところはどうなのかと、学生たちに何度か聞いてみたのですが、多くは、大したことないという答えです。報道ほど急速ではないが、少しずつ良くなっているということでした。

自国をすごいと言いたがる学生がいる中で、ベトナム人学生たちは、ずいぶん冷静な言い方をするものです。これがかえってベトナムの発展は本物かも知れないという印象を与えたものでした。しかしコロナ以降、混乱が生じ、経済状況も変わったようです。

どうやらバブルが崩壊した模様です。それ以前なら、日本で仕事を学んで自国で成功したいという学生がいました。もはや雰囲気が前とは別のものになっています。経済の混乱がどれくらいひどいのか、今後どうなるのか、数年すればわかるかもしれません。

      

3 改革開放の終焉

ハノイ在住の川島博之がJBpressに[愛人たちが故郷に出戻り、バブル崩壊の「ミニ中国」ベトナムで起きていること]という記事を書いています。ベトナムは共産主義の国ですから、政治家や高級官僚が力をもっていて、汚職がはびこりがちです。

[ベトナムでは不動産バブルに関する情報はほとんど開示されていない。銀行は不良債権を抱えていると思われるが、その全貌は不明である]とのこと。なぜバブルが崩壊したのかについては書かれていませんが、その解決については悲観的だとしています。

おそらく外資が急速に入ってきて不動産が高騰し、外資の流入が減ってきたために不動産の高値が維持できなくなったという構図でしょう。川島は、経済学の知識のない官僚に解決などできないだろうと述べます。ベトナムは「ミニ中国」だというのです。

両国とも[改革開放(ベトナムでは「ドイモイ政策」)に打って出た。そして豊かになったのだから再びかつての強固な社会主義体制に戻れば良い]との考えが台頭しているとのこと。今後、留学生を見ていくときにも、重要な補助線になると思いました。