■助詞「を」と「で」の違い:日本語教育の必要性

     

1 助詞の使い方がわからない学生

日本語教育という用語は、外国人向けの本に使われることがよくあるようです。日本人向けの日本語教育の本があるかと、少し探してみましたが、ぴたっと来るものが見つかっていません。自分の経験から考えていくほうがよいかなという気がしています。

日本人と留学生に向けて後期の講義が始まりました。試しに、「鳥が空【 】飛んでいる」「夏休みに海【 】泳いだ」という例文の【 】に助詞を入れる問題を出してみました。いつものことながら、日本人だからといって安心してはいられません。

日本人のクラスで、たまたま指された学生が【中】を入れたので、爆笑になりました。助詞という言葉も知らなかったようです。なぜか、こういうことが起こるようになってきています。「空に飛んで」「海に泳いだ」という答えも出てきました。いやはやです。

      

2 正解の正しさは認識可能

日本人の中にも、助詞の使い方がおかしい学生がめずらしくなくなりました。一方、間違いようのないことです…という学生もいて、差が大きくなってきています。このあたりは、留学生のクラスでも似た感じです。個人差が大きい点で共通しています。

「空を飛んでいる」「海で泳いだ」が正解だと言われれば、ほぼ全員が、その正しさを理解しました。こういう練習をしていくうちに、多くの場合、正解率が高くなってくるのです。感覚だけで答えていた学生も、不安なときには、理屈で確認してから答えます。

日本人の若者や留学生の様子を見ると、意識して理解する過程が必要だと感じないわけにはいきません。教育が必要だということです。正解が示された後、なぜ空のときには「を」がつき、海のときには「で」がつくのでしょうか…という問題になります。

     

3 全体概念と区切られた領域

助詞「を」は行動の対象となるものに接続します。このとき対象となるものの全体像を指している点がポイントです。「空」というものを、全体としてとらえています。縦横にという感じです。一部でなくて全体を行動の対象としているので、「空を」になります。

助詞「で」のほうは、全体を対象とするものではありません。区切られた領域を表しています。海を縦横に泳ぐわけではなく、自分の泳ぐ範囲、つまり海の一部の領域を指すものです。「海で」という場合、「海の中のある区切られた領域」を表しています。

「公園を散歩した」と「公園で散歩した」の違いも、上記のことを反映していることがわかるでしょう。公園を全体的に歩いたニュアンスがあるのは「公園を」の方です。「公園で」ならば、公園の中でも散歩した領域を表すニュアンスでしょう。

留学生は日常会話に不自由しません。簡単な作文ならば書けます。日本語のテキストをかなり見てきた人たちですが、しかし、こうした説明を聞いたことがないと言います。一方、日本人学生は、全く文法書と縁がありません。教育が必要だと言いえるでしょう。