■なぜ目標が必要なのか:目的と手段の間をつなぐもの
1 目的と手段は対となる概念
目的と手段とは対になる概念だと言ってもよいでしょう。何を目的にして行動するのか、これがまず問われます。その目的を得るために、どのように行動すればよいのかを明らかにしたものが手段です。目的と手段は、原因と結果のように両者が結びついています。
目的は、客観的な存在ではありません。何をすべきか、何がしたいかというのは、当事者の思いです。したがって主観的な概念です。主観的な概念を制約する要件があるとしたら、社会性ということになります。「知りて害をなすな」という制約です。
社会が許容するもの、歓迎するものでなくてはならないという条件のもとに、目的が成立します。自分がしたいことは、社会が許容するものであるのかどうかが審査されるのです。手段も同じように、社会が許容するものであることが条件となっています。
2 目的は主観的・目標は客観的
目的は主観的であるのに対して、手段は客観的なものではありません。手段は合理性が必要です。合理的かどうかは、じつのところ主観的なものが具体化してこないと、わかりにくいものでしょう。実現の対象を具体化し客観化することが必要になります。
マネジメントで目標が必要なのは、手段の適切さを評価するためだと言ってもいでしょう。客観的な目標があれば、達成したかどうかが明確ですし、どのくらいの達成度なのかもわかってきます。手段の適切さの前提として、客観基準が必要になるのです。
目標は客観基準ですから、管理することができます。達成の有無と達成の程度を測るためには、測定の尺度がなくてはなりません。測定方法も標準化されている必要があります。これが出来たなら、個々の実行を目標と比較することが可能になるということです。
3 2種類の改善と目標
目標を管理することは、実行し、それを測定し、目標と比較することだと言えます。その結果、見えてくるのが実行の適切性です。これにより手段の適切性・合理性が判定できます。結果を客観的基準で見ると、目標とのズレによって判定が可能になるのです。
ズレ方に2種類あるのはご存知の通りです。上振れと下振れといってもよいでしょう。良いほうにブレたときにはポジティブフィードバック、悪いほうにブレたときにはネガティブフィードバックが必要です。ともに、ブレた要因はなんであるかの追求になります。
このうちネガティブフィードアップについては、畑村洋太郎の『失敗学のすすめ』がその解説になっていると言ってよいでしょう。こちらは、どちらかと言えばやりやすいことでもあります。難しいのは、成功したときの要因分析と、その分析を活かすことです。
こうやって目標管理から生まれるのが改善ということになります。改善には2種類あるということです。原因と結果を考えるよりも、客観基準に基づいて判定されるために、成果に直結した手段が生まれます。改善するためにも、客観基準たる目標が必要なのです。