■ビジネス文書でも前提となる「価値評価」:ブレない評価軸の必要性

    

1 価値判断・価値評価が前提

IT企業の部門長の人から、前回書いた【社会科学の前提とアプローチ】について、意味不明だったと言われました。「社会科学」というのは何のことなの…というような人ですから、それは無理もないでしょう。別の書き方をするからと伝えておきました。

社会「科学」と「科学」を名乗る以上、客観性を重視します。その人ごとの価値評価が入ることは主観的になるため、好ましくないということです。安易に価値評価を入れないことが原則になります。しかし価値評価を入れないで論じることなど、できません。

山之内靖は『マックス・ヴェーバー入門』で[彼が論じたのは、社会科学のいかなる命題も、根本的には何らかの価値判断を前提とせざるを得ないということ、そしてこの点をはっきり自覚している必要があるということでした](p.3)と記していました。

     

2 価値判断・価値評価は定性的に表現される

社会科学でのことだけなら、関係ない話かもしれません。しかしビジネス文書でも同じ原則が適応されます。自分は偏見なしに物を書いたという人がいたら、それは甘いということです。どんな立場に立って論じたのか、自分の価値評価を意識する必要があります。

価値からの自由というのは、自分の立場を意識することが前提です。価値判断・価値評価によって、分析の結論が変わる可能性もあります。価値を明確に表現することが必要です。この場合、定性的な表現になります。定量的な表現にはなりません。

定量的な分析を活かす場面でも、その前提として、どうあるべきかが問われます。政策を考えたり、会社の方針を決める場合に、自分たちのミッションに立ち返ることでしょう。行動の基盤にあたる価値評価の部分は定性的に表現するしかない領域だといえます。

      

3 適切で明確なブレない評価軸を作る

ビジネスの基盤には、目的やミッションが必要です。個々の問題でも、しばしばビジョンが必要になります。これらを明確にし、意識することが必要です。どんな価値判断によって行動するのか、どんな見通しをもって行動するのかが問われます。

状況に応じてビジネス文書でも、自分の考えはこういう価値判断によっています、と書く必要があるということです。立場を明確にするからこそ、客観性が高まります。自分には偏見がないというのは前提での間違いです。取り返しのつかないミスになります。

価値評価を明確にするということは、その評価基準が簡単にはブレないということをも含めた概念です。目的やミッションなどの価値評価が、その都度ブレていては信頼されません。ビジネス文書でも、全体を貫く価値判断に一貫性があることが基本です。

何かを評価するとき、初めに使った評価軸が類似の場面で放棄される例は、めずらしくありません。個別案件で使った評価軸が、別の場面でどこまで使えるのか、よほど意識しないと、適切で明確な評価軸は作れないということです。本気で取り組む必要があります。

       

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