■EBMについて:「エビデンスに基づく医療」と「事実に基づく経営」

    

1 医療の原則である「Evidence-Based Medicine」

ドクターとお話すると、エビデンスという言葉が出てくることがよくあります。現在の医療の原則はエビデンスに基づく医療(Evidence-Based Medicine)ですから、当然かもしれません。しかしEBMが提唱されたのは1990年代のことですから、比較的最近のことです。

英語版のウィキペディアなどのWEB情報によると、カナダの医師であるゴードン・ヘンリー・ガイアット(G.H.Guyatt)教授が1991年にEBMを提唱したとあります。日本では1990年代半ばに導入されたとのこと。実際に、どこまで普及したかは微妙なところです。

しかし少なくとも保険治療が認められた領域では、その治療法や投薬に関して、EBMの考えで判定されているはずです。今の医療の原則であることは間違いありません。エビデンスの概念が徐々に整備されていけば、実際の治療でもより有効なものになるでしょう。

       

2 実践が難しい「Evidence-Based Medicine」

少し前に、たまたま有名大学病院で検査をしていただいたことがあります。その時の担当だった若いドクターは、わかりやすい物語にリライトしたつもりでお話しくださったようです。患者側が何も知らないという前提で、ずっと説明してきたのだと思います。

これは患者側の問題でもあると思いました。たぶん本気で説明しても無理だという考えがあったはずです。それでも感心だと思ったのは、きちんと基本の書かれた資料をくださったことでした。資料の方は、聞くに堪えないめちゃくちゃな説明とは違っていました。

EBMを実践するのがドクター側だけの問題ならば、もっと容易に実践できるのかもしれません。しかし患者への説明が必要ですから、ここが問題です。若いドクターは苦手なようでした。あるいは優秀な若手の臨床医をわずかしか知らないのは偶然でしょうか。

      

3 注目される「Evidence-Based Management」

『事実に基づいた経営』の「日本語版への序文」で著者のフェファーとサットンが[「事実に基づいた経営」(Evidence-Based Management)」を行うことは簡単ではないという例もいくつも見てきた]と記しています。原著は2006年、日本語版は2009年の出版です。

マネジメントでも問題となるのは、エビデンスをどうとらえるかという点だろうと思います。これが明らかになってくれば、導入がかなり進む可能性もあるでしょう。企業の経営層がエビデンスを受け入れて決断し、成果を上げればればいいということになります。

▼インテルのCEO兼会長だったアンディ・グローブが前立腺がんになったとき、彼はあらゆるデータを集めて、様々な治療法のプラス面とマイナス面を比較し、どうすべきかの判断に役立てた。(中略)しかしグローブは、他のシリコンバレーの多くの経営者と同様、ストックオプションに対しては、明確な証拠がないのに、そのプラス面を主張し続けた。 p.16

各患者へその都度の説明が必要になる医療よりも、一定期間での成果が求められる経営への導入の方が有利な面もあります。まだエビデンスの不整備という面もあるはずですが、今後、エビデンスはマネジメントの中核概念として、より重視されることでしょう。

      

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