■シンプルさの検証が必要な理由

      

1 シンプルさの概念

シンプルさは検証の対象になります。どうやって検証したらよいのでしょうか。それほど難しい話にはなりません。シンプルさに二つの系統があるということが大切なポイントになります。二系統のシンプルさについて、『伝統の逆襲』で奥山清行が書いていました。

一つは中核となるもの。「何かコアになる価値があって、それを凝縮したもの」です。もう一つは、全体がきれいに統合されたもの。「たくさんの要素がありながらも、それらを統合し、純化し、洗練したもの」という言い方になります。

こうしたシンプルの概念を見ると、ある側面を指摘するだけでは、シンプルと言えないことは明らかです。たとえそれが、重要な指摘であっても、それだけではシンプルにはなりません。それ以外の側面が従たるものになる場合に、その側面が中核になります。

        

2 シンプルさについての2つの検証

では、どういうものがシンプルだと考えられるのでしょうか。シンプルさの概念からして、シンプルさの検証も2つが問われることになります。第1に、シンプルなものが中核を占めているか、第2に、シンプルな体系であるか…という2つです。

第1の場合、基礎概念となるものが明確であること、その概念が中核になっていることが問われます。たとえば、牛たんねぎしの場合、「親切」が経営の中核になっているようです。根岸榮治は『日本でいちばん「親切な会社」をつくる』という本を書いています。

第2のものとして、東京ディズニーリゾートのHPにある行動規準「The Five Keys~5つの鍵~」があげられそうです。「Safety, Courtesy, Inclusion, Show, Efficiency」が全キャストにとっての行動規準になっています。これは見事な基準です。

       

3 検証が必要な理由

交通ルールでいえば、青信号・赤信号がまさに中核になっています。こういう単純明確で広く使えるものは、そう簡単に得られるものではありません。なんとなくシンプルそうに見えて、本当にシンプルの基準に適っているのかどうか、検証が必要です。

もう一つ大切なことは、体系が適切であるかどうかの検証も必要となります。全体構造をシンプルに言い表せたとしても、時代とともに変化が起こりますから、もしかしたらズレが生じているかもしれません。その検証も必要になります。

ディズニーの行動基準は、かつて「Safety, Courtesy, Show, Efficiency」のSCSEでした。そこに「Inclusion」が加わりました。「さまざまな考え方や多様な人たちを歓迎し、尊重すること」という意味だそうです。この改定も見事というしかありません。

中核を作ることも簡単ではありませんし、シンプルな体系を作るとなると、これは極めて難易度が高いと言うべきでしょう。自分でも検証してみないとリスクがありますし、お手本とすべきものを見出すときに、シンプルさの検証が必要不可欠だと言えます。

       

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