■文書のスタイルと内容

     

1 文書のスタイルは思考スタイルの反映

当たり前かもしれませんが、事実に基づいた解釈でない限り、その解釈は通用しません。仮定を前提にして解釈する場合、可能性が言えたとしても、それがどうしたのだという扱いになります。たくさんの文字を連ねても、その文章には価値がありません。

文書のスタイルは、こうした思考の原則を反映させたものです。大原則に合わない思考法はスタイルの面から排除されることになります。標準的なスタイルが確立した分野では、そうしたスタイルで記述することがルールだということです。

刑法ならば、構成要件を判断し、違法性、責任を判断するということになります。条文の記述に該当する行為であるかどうかを検討し、違法性の有無を検討し、さらに責任の有無を検討するのです。この順番で検討していくことがルールとなっています。

      

2 データ・情報が欠如する場合

このように文書のスタイルが思考のスタイルと一致している点が大切です。思考のスタイルが決まっている場合、それに従わなくては、ルール違反になります。ところが、こうしたスタイル重視がどうも気に入らないという感覚が、どこかにあるものです。

ビジネスの場合でも、たとえば先にあげた「事実を前提にして解釈するという原則」は妥当します。しかしビジネスの場合、必要となる事項のすべてにおいて、確たるデータ、情報がそろうということのほうがめずらしいことかもしれません。

すべて確実なデータや情報がそろっているなら楽でしょう。しかし、そうではない場合がいくらでもあります。こういうとき、先の「事実を前提にして解釈するという原則」など、ばかばかしく感じるかもしれないのです。さて、どう考えたらよいでしょうか。

      

3 確証がある場合とない場合

事実とは言えないケースの場合、シンプルな結論になりそうです。「事実を前提にして解釈するという原則」が妥当しないケースなのですから、別の原則が妥当するということになります。まずは事実であるかどうかを、検証することが必要になるでしょう。

まず第一に、事実であると確認できていない点を明確にすることが必要です。第二に、どれくらいの確かさであるかを推定することになります。第三に、仮定をもとにしたシミュレーションにおいて、特別な価値を有するかどうかの検討も必要かもしれません。

もし事実であるかどうかが検証できるのであるなら、ここでの検証が最優先されるでしょう。それが不可能な場合、ほかの事例から類推してみたり、カンを働かせるなどして、どれくらいの確かさであるのか、その確率を推定することになるでしょう。

事実でなければ解釈はできません。事実であるならば、解釈が可能になります。確証がない場合、事実でない場合のリスクと、事実であった場合の期待される成果を考慮して、判断するしかありません。こうした検証は、また別のスタイルでなされるということです。

     

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