1 一流を超一流にする方が楽
部下の文章をチェックするための講座について、何度か触れました。講義の後、ほぼ毎回のように聞かれる質問があります。何度も苦労して訓練しているのだけれども、どうにもならない人たちがいて困っているというものです。
すでにテキストに、ドラッカーの言葉を入れていますし、圧倒的な成果をあげた創業者の言葉も引用しておきました。ドラッカーたちが言うことは、シンプルです。普通の人を一流にする方が、一流の人を超一流にするよりも難しいということになります。
どこまで部下を教育するかは、その人が関わるチームや部門の状況にもよるでしょう。どのくらいの労力がかかって、どのくらいの成果が上がって、そのために使った時間で自分がどのくらいのことができるのか、こうした点をよく確認しないといけません。
中学のドリルまで探してきて、何とかしてやりたいというリーダーもいました。もう10年かっやってきたというのです。成果は思ったほど上がっていません。そうなれば、見切りをつけるしかないでしょう。実際、そうする踏ん切りがついたとの連絡がありました。
2 訓練の効率化のあとに問われること
部下を訓練で伸ばすために、文章のチェックを利用するのが正しい方法です。すべての人に同じように訓練しても、向き不向きもあります。やる気の問題もあります。だから、選別しなくてはなりません。限られた時間の中で、一番成果をあげることを選ぶことです。
そうすると、次の質問が出てきます。これは文章チェックとは違って、リーダーの責任の話なのですが、ほぼご自身で考えてなかった問題と言えます。しばしば聞かれることですので、リーダーの人に、どんな質問だと思いますかと聞いてみることがあります。
たいていの方が、方向はお分かりです。部下の訓練のために時間をかけすぎるのは、やはりまずい、効率的に行わなくてはならない、そして自分がやるべきことをきっちりやりたい…と、しかし、ですよね、という話になります。ただ、しかしの後がズレるのです。
3 出来る人を前提に構築した業務のリスク
訓練を効率的に行うこと、そうするとどうしてもスキルが上がらない人が出てきます。一定以上のスキルがないと、仕事がまわらなくなりかねない、どうしたらよいかという質問が多いのです。ここからが質問をしたリーダーの考えと大きく違ってきます。
一定レベルを超えた業務ならば、属人的になりますが、それは全体ではありません。一部のポイントになる業務です。その上、属人的にしなくてすむ方法もあります。大切なのは、鍛え上げたスタッフでないと達成できない業務の仕組みを見直すことです。
ごく少数のプロフェッショナルと、様々に分解した仕事を組み合わせて全体のビジネスがまわっています。スキルを身についた人が、一定数いないと、仕事がまわらないというのではリスクがありすぎです。業務の組み立てに問題があります。
やる気にならない部下のために、無理やり訓練をしても効果が薄いです。もっと気楽にできる業務に組み立て直しす必要があります。業務マニュアルを見直すべきなのです。スキルのあるスタッフがいる前提で業務を組み立てるべきではないということになります。