■信頼できる「1万時間の法則」:ダニエル・ゴールマン『FOCUS』から

    

1 あてにならない「1万時間の法則」

多くの人が、プロになるには1万時間の練習が必要だという話を聞いたことがあるようです。私もかなり前に、ヒットしていたマルコム・グラッドウェル『天才! 成功する人々の法則』で読みました。時間を基準にしているので、わかりやすい話ではあります。

もはや伝説のように、信じる人は信じている話になっているようです。まだそんな話をする人がいました。当然、そんな簡単な話ではありません。常識を働かせれば、妙なことだと思うはずです。EQを提唱したダニエル・ゴールマンも『FOCUS』に書いています。

▼「1万時間の法則」というものがある。どのような分野でも、一流の成功を収めるには一万時間の練習が必要である、という法則だ。この法則は、成功するための絶対的な秘訣としてウェブサイトなどで原電され、高度のパフォーマンスを追求するワークショップで連呼されるようになった。しかし、問題は、この法則だけでは不十分である、ということだ。 pp..212-213 『FOCUS』(日経ビジネス人文庫)

注に[わたし自身も、この法則の人気にいくらか貢献したと思う](p.355)と記しています。1万時間という基準が独り歩きしたということです。時間の基準だけで、成果が測れるくらいなら、世話ないよ…という常識が働かないと、誤解するかもしれません。

      

2 アンダース・エリクソンの見解

ゴールマン自身、[超一流の音楽学校でトップの成績を収めるバイオリニストはすでにその時点で一万時間を練習を積んでおり、一方、7500時間しか練習していないバイオリニストは二流の地位にしかなれない、ということを発見した](pp..355-354)のでした。

しかし[同じ失敗をくりかえすようなへぼゴルファーだったとしたら、同じ失敗を一万時間くりかえしたところで、ゴルフの腕が上達することはない](p.213)でしょう。そう言われれば、そうだという話になるはずです。どうすればよいのでしょうか。

まず条件があります。[身長や体格など生得的な要素が大きくものをいうスポーツは別](p.213)です。条件に合えば、[「理にかなった練習」を積み重ねればほとんど誰でも一流のパフォーマンスができるようになる]とアンダース・エリクソンは提唱します。

[エリクソンは、一流の専門技術を持つ人たちを研究して一万時間の法則を提唱した専門家]です。[エリクソンは、すぐれたバイオリニストたちは師事する音楽家から指摘された箇所の向上に全神経を集中して練習していることを発見し]ました(p.214)。

     

3 「理にかなった練習」モデル

プロの指導者が[練習を課し、つねにフィードバックを与えて生徒を激励した](p.354)ならば成功しそうです。意識して集中すると、最初の段階では苦労しても、そのうち[苦も無くできるようにな]ります。じつは[ここからが一流との分かれ目]です(p.215)。

何となくできることに抵抗し、[完璧にできるようになるまで能動的に集中を続け、うまくいかない部分を修正し、メンタル・モデルを改良し、コーチから与えられるフィードバックの特定部分に集中する](p.216)。これが「理にかなった練習」です。

ただ[一流のプレーヤーは最大限の負荷をかけた練習をこなすが、練習中に集中力が低下するようなやり方はし]ません。[きつい練習は一日四時間程度]であって、メニューに最初から[休憩時間が組み込まれてい](p.217)ます。読むべき本はこちらでしょう。

      

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