■業務の構築はシステム化に先立つ:システム導入と知的生産
1 システム化で解決できないもの
もはや文書は電子化しデジタル化されるのが標準になっています。こういうときに、手書きの書類を何枚も作らなくてはいけない業務は目立ちますし、おかしいと感じることになります。システム化しようという発想が出てくるのは自然でしょう。
たいていの人はそう考えます。それ自体、おかしいとは思いません。しかし小さな組織のリーターのお話を聞くと、あらあらと思います。専門の業者さんにお願いすれば、手書きの書類をデジタル化するのは簡単なのでしょうが、数百万かかると言われたとのこと。
費用がかかりすぎてシステムの導入は無理ですとのことでした。深刻な顔をしておっしゃるので、業務のプロですよねとからかいながら、まったくナンセンスだとお話ししました。一見、当たり前の話に見えますが、こういうデジタル化が一番バカげています。
業務をきちんと構築しないで、システム化をしても意味がありません。システム会社が業務について責任を持ってくれるはずはありませんし、こんな状態でシステムを導入したところで、たいした成果など期待できません。残念ながら、現在進行形の本当の話です。
2 システム化しなくても効率化は可能
そもそも書類のデジタル化など、そんなに大変なことでしょうか。パソコンはありますか、プリンターはありますかと確認してみると、もうたくさんお持ちですし、十分すぎるほどの高性能な機種でした。それなら現時点でもデジタル化ができます。
テキストファイルで数種類の書類の作成に使いまわしのできるデータが作れます。取引相手方が手書き文書を要求していたので、そこだけは交渉が必要でしたが、どうやらそれもクリアできそうだとのこと。ならばあとは通常のアプリで何とかなります。
手書きに代わって、プリントの印字で問題ないという確認が取れたら、すぐに実施できるでしょう。自社用の文書のフォーマットは自由に変えられますから、システムを導入する必要はありません。ただ、この機会に業務を変えたほうがよさそうです。
もはやここから先は、今後にかかっていますので相手次第ですが、かなり危険な状況だったと思いました。すこし工夫すればシステム化しなくても数段効率化できます。それと共に業務の仕方を変えると、たぶん半分以下の労力になるはずです。
3 記憶だけに頼らない仕組みの構築
先日、メモの処理についてスキャンや写真での処理を教えてくださった方々は、デジタルのスキルが一定以上あって、業務での経験もお持ちの方々でした。システム化の問題点もよくわかっているでしょう。その人たちにとって、合理的な提案だったはずです。
しかしメモの場合、個人的な問題が絡んでくることになります。少なくとも私のメモは、何かを生み出すための手段でしかありません。それが発展しなくてはただのゴミです。実際のところ、ほとんどがゴミになります。すべてを画像処理する価値などありません。
先にあげた業務の仕方を変えるという話と同じことです。問題はメモを発展させる方法、あるいはメモを適切に選別する方法の構築です。その仕組みがなかったら、メモの処理の仕方が決まりません。記憶という最強の武器だけに頼るのは、そろそろ限界のようです。