■日本語の文法分析:11月第4週のドリル

     

1 練習すればできるようになる文法分析

文法についての理屈よりも、ドリルの方がわかるというお話を何人かから頂きました。その通りです。ビジネス人となった教え子たちがやっていたのも、簡単な理屈を説明したあと、ドリルを通じて理解していくことでした。そのほうが効果的です。

文法分析は、わりあいすぐにできるようになります。個人個人で答えのブレもそうありません。こちらが答えを示すと、たいていピタッと一致するようになります。ときどき、ああ読めてませんでしたと言うところもありますが、自分でミスが分かるのが大切です。

今週もやってみましょうか。素材は2021年11月24日の日経新聞社説です。「備蓄原油の放出は市場介入の手段でない」という題がついています。文末がどこか、その主体となる言葉は何か。この主体の言葉が文の主役です。補足の言葉、TPOの条件が加わります。

     

2 主役+文末がわかれば簡単

▼米国が日本や中国、インドなどと協調して備蓄原油を放出する。高止まりが続く原油価格の抑制が狙いだ。
ただし、効果は見通せない。石油市場の安定には一時しのぎの策でなく、産油国と連携し適切な需給を探ることが重要だ。

【米国が日本や中国、インドなどと協調して備蓄原油を放出する】。主役+文末は【米国が+放出する】です。「何を?」となります。補足は【備蓄原油を】です。【日本や中国、インドなどと協調して】という条件が加わります。これは問題ないでしょう。

【高止まりが続く原油価格の抑制が狙いだ】。主役は【高止まりが続く原油価格の抑制が】です。「高止まり【の←が】続く原油価格の抑制が」でしょう。【効果は見通せない】。文末【見通せない】のは、主役の【効果は】です。ここも問題ないでしょう。

問題は、【石油市場の安定には一時しのぎの策でなく、産油国と連携し適切な需給を探ることが重要だ】でしょう。これらをどう区切ったらよいのか、そこで間違いがちです。これがすらっとできたら、かなりのレベルといえます。主役+文末はどうなるでしょうか。

     

3 読点とずれる区切れ

【石油市場の安定には/一時しのぎの策でなく、産油国と連携し適切な需給を探ることが/重要だ】と区切れます。【石油市場の安定に(は)】は補足。主役+文末は【一時しのぎの策でなく、産油国と連携し適切な需給を探ることが】+【重要だ】となります。

[補足+主役+文末]の構造です。骨組みだけにするならば、[石油市場の安定に/適切な需給を探ることが/重要だ]ということになります。主役が文形式の【一時しのぎの策でなく、産油国と連携し適切な需給を探る】に、【ことが】の接続した形式です。

【一時しのぎの策でなく、産油国と連携し適切な需給を探る】の部分を取り出して分析すると、どうでしょうか。【産油国と連携し適切な需給を】は補足、【一時しのぎの策でなく】がTPOです。【適切な需給を…探る】【一時しのぎの策でなく…探る】となります。

読点を区切りの目印だと考えて、【石油市場の安定には一時しのぎの策でなく】をひとまとまりにしがちです。しかし、こう考えると【石油市場の安定には一時しのぎの策でなく】⇔【重要だ】となって、文末との対応関係がなくなります。ここが注意点です。

     

カテゴリー: 日本語 パーマリンク