■目標をどう決めるか:リーダーのために その3

1 管理職の役割の変化

1980年代から、マネジャーという言い方があまりなされなくなってきた。リーダーという言い方に変ってきた。ビジネス環境の変化が大きくなってきたのは、この頃からグローバル化が進んできたからとも言われる。それに伴って、管理職の役割も変わってきた。

仕事の仕方が、単純労働ではない、何かに変わっていった。ドラッカーはそれを知識労働と呼んだ。ここでいう知識というものの定義は明確になっているわけではない。あえて言えば、各人が考えて仕事をしなくてはならない、単純労働とは別の労働である。

リーダーが考えるべきことで一番大切なことは、自分達のビジネスが現在のビジネス環境下で飛躍できるのかどうかのチェックになる。同じビジネスを継続するなら、人の評価が最重要であるが、もはや仕事自体、ビジネス自体のチェックがより重要になった。

 

2 「会社はNPOに学ぶ」

1989年、ドラッカーは「会社はNPOに学ぶ(What Business Can Learn from Nonporofits)」を書いている。この論文はドラッカーのマネジメントの変化を示すものとして、重要なものである。ここから後期のドラッカーは生まれたのではないかと思う。

▼NPOは、戦略や取締役会のあり方について、会社の世界では口先に終わっていることを実行している。知識労働者の動機づけや生産性という重要な問題についても、会社が取り入れるべき在り方や制度を生み出すことによって、パイオニアとなっている。 『P.F.ドラッカー経営論集』 p.87

会社よりも先に、NPOが実践しているとドラッカーは評価している。背景には、アメリカ社会での変化がある。[今日、家族やコミュニティの崩壊や解体、価値観の喪失がいわれている](p.103)という点を指摘して、それをマネジメントの前提と考えている。

多様性という言い方がなされ、こうした時代の変化を前提にした経営が求められている。かつての「経済人」のようなモデルでは簡単に説明できなくなってきている。利益を隣人愛の尺度とする経営自体を変更するしかなくなっているということになる。

 

3 目標を立てる前提

ドラッカーの考える「あるべき姿」は、どんなものなのか。NPOが示しているという役割は以下のようになる。[コミュニティの絆を生み出し、能動的な市民性や、社会的な責任や、価値に対するコミットメントをもたらしつつある](p.103)。

こうしたことが、[会社に対しても、明快な教訓をもたらす。なぜならば、知識労働者の生産性を向上させることが、アメリカのマネジメントにとって、今日最大の課題だからである](p.104)。このことは、「アメリカの」場合だけに限られるわけではない。

なぜNPOのあり方から、教訓が引き出せるのか。会社で重要な役割をする人たちの[ほとんどが、教会や、母校の理事会、スカウト、YMCA、地域の共同募金、オーケストラなどでボランティアとして働いている]からである。なぜボランティアをするのか。

▼その理由を聞くとほとんど例外なく、「会社の仕事はやりがいが十分でなく、成果や責任も十分でない。使命も見えない。あるのは利益の追求だけだからだ」との答えが返ってくる。 p.104

利益の追求だけでは、やる気を生み出さない。つまり使命が見えること、成果や責任を果たしているということが必要となる。こうした前提から、目標をたてなくてはならなくなっている。これらを満たすための目標でなくては成果が上がらないということになる。

 

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