■使命から目標のほうへ :リーダーになってしまった人へ その12

1 目標の教科書

目標について、具体的なイメージを描くときに、一番役立つ本はエディー・ジョーンズの『ハードワーク』である。繰り返しこの本について触れてきた。目標を立てて、成功するための教科書であるといえる。この人は、ラグビー元日本代表ヘッドコーチであった。

目標の要諦は、目標は明確でなくてはならないこと、高い水準のものではならないことである。エディー・ジョーンズの目標は、「日本チームが世界のトップ10に入ること、3年後に開かれるワールドカップで勝利をあげること」であった。明確である。

この高すぎると思われた目標を、当初、選手たちも信じなかった。こんな声があったそうだ。「日本が世界の強豪チームに勝つなんて、絶対に無理です。日本は、ワールドカップで過去に1勝しかしたことがないんですよ。それも20年以上も昔です」。

しかし結果は、[日本は世界のトップ10入り(最高9位)、2015年のワールドカップでは3勝を上げることができたのです]。高すぎると思われた目標は、実現した。エディー・ジョーンズは、最初から、それが見えていたリーダーだった。

 

2 明確なビジョン

先が見えることを、ジョーンズは[明確なヴィジョンを持つ]と表現している。その例としてジャイアンツの原辰徳監督を上げて、[原さんは、どのようなチーム作りをし、どんな戦い方をするかという、独自で、非常に明確なビジョンをもっていた]と評価する。

ビジネスならば、どんな組織を作り、どんな仕事の仕方をするかということである。これが見えているリーダーが、明確なビジョンを持つリーダーだということになる。どうすれば、競争に勝てるのか、そのために何ができなくてはならないのかが問われる。

スポーツのケースから学ぶことは、ビジネスから学ぶよりもわかりやすい。なぜなら、スポーツの場合、闘いの領域は決まっているのである。ビジネスはもう少し面倒なことになる。どの領域で戦うのかというマーケティングの問題が大きくのしかかる。

 

3 成果を上げる基礎

ドラッカーはビジネスの機能の中核として、マーケティングとイノベーションを上げた。これらはいうまでもなく最重要事項である。しかしこの難しい問題は、また別の領域である。まず『ハードワーク』から、目標を立てるまでのモデルを見ていきたい。

まず日本に来て、[人々に強い個性がなく、みんな他人から自分がどう見えるかと言うことばかり考えているように見え][私は少なからず失望を感じました][日本は、そんな弱弱しい国ではないはずです](2016年版:p.31)。このとき自分の役割はどうなるか。

[最初は、日本のラグビー界全体を変えなければならないと思った]。しかし[協会から見て、私は外国人の雇われコーチにすぎません](p.175)。[コントロールできないことを考えるのをやめた](p.176)。じつに、これが成果を上げる基礎になったのである。

 

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