■ドラッカー「未知なるものをいかにして体系化するか」について その3


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7 変化を体系化すること

変化することが常態であり、ダイナミックに動く変化そのものが秩序であると考えるならば、変化を予測することができることになります。予測するためには、どんなふうに変化しているのかをモデル化して、判断可能な形式を作る必要があるでしょう。

このとき、どんな原理で変化が起こっているかという因果関係を問うアプローチだけでは、現実に対応できません。現実の世界では、原因が当分わかりそうもない状況で、さまざまな変化が起こっていて、何とかしなくてはならない事態に直面するのです。

このときドラッカーが言う通り、[変化を予期し、方向づけし、管理できる](p.13)ことが大切であり、これこそが体系化だということになります。「未知なるものをいかにして体系化するか」というときの[体系化]がポイントだということです。

体系化ができたならば、対象とするものの内容が理解でき、そのためにどう行動すべきかがわかり、それが実践できる形式になっているということです。なぜなのかを考えるアプローチではなくて、どうすればいいのかを考えるアプローチになります。

わたしたちは日常的に、このアプローチをとっているはずです。パソコンが、動かなくなることがあります。あれこれやってもどうにもならなければ、仕方ないので再起動させることになるでしょう。[変化を予期し、方向づけし、管理でき]ているのです。

なぜパソコンが動かなくなったのか、原因はアプリケーションのバクなのかもしれません。しかし、そのときどきで原因を追究しないのが普通でしょう。対応策がわかって、実際に問題が解決するならば、継続して利用していけるのです。

 

8 形態とプロセスのコンセプト

体系化がなされていたら、使いこなせるようになります。ドラッカーはイノベーションについて問われて、以下のように答えています。あなたの本が出る前から、そこに書かれていることは行われていたではないかという問いでした。

▼そうだ。そして皆が、それらのことは天才だけができることであって、真似できないことと考えていた。しかし、理解できないために真似ができないというのでは、考え出されたものとは言えない。それは単に行われていたというにすぎない。 p.13 『マネジメント・フロンティア』

「単に行われていた」のと、理解して運用ができるというのでは違います。パソコンの場合でも、パソコンが動作しなくなることがあると理解しているからこそ、あわてずに、そのときには再起動するという行動に移ることができます。偶然の行動ではありません。

理解するための方法が、原因と結果の把握に基づくのではなくて、問題の把握とその解決法の獲得に基づいたものになっているのです。その結果、何が問題なのか、どうすればよいのかが問われることになります。

▼実際に仕事をしている人たちは、形態とプロセスのコンセプトを理解する。それどころか、形態とプロセス以外は眼中にない。 p.9 『テクノロジストの条件』

形態とは、問題と解決という機能的な概念から作られた全体のデザインというべきもののようです。仕事の観点からすれば、[形態とプロセス]の関係は、ビジネスモデルと、その運用プロセスの関係だということになります。

 

9 「答え」よりも「問い」

ドラッカーが必要だと指摘した体系は、①全体像のコンセプトを示す体系、②定性的で不可逆の変化についての体系、③変化の予期を可能とする厳密な体系、④方向性を示す体系…でした。以下のように書いています。

▼システム、有機体、状況のいずれであれ、普遍的かつ具体的な現実としての全体のコンセプトを与えるべきものである。発展、成長、腐敗など定性的かつ不可逆の変化についての体系である。さらには、変化の予期を可能とする厳密な体型である。原因ではなく方向性を示す体系であり、蓋然性ではなく可能性の微積分を可能とする体系である。 p.10

これらは[とても実現しそうのない大それたことに思われる]が、実際にはイノベーションなどに関して、[そのような体系を基盤として仕事は進められている](p.10)のです。ビジネスをモデル化し、運用の仕組みを決めて、検証しながら進めています。

[われわれは目的意識をもち、方向づけし、体系化した変化としてのイノベーションを実践しつつある](p.11)。ここでは、何をしようとするのか、どうやって管理していくのか、どういう方法で実現していくかということが問われています。

変化を前提にして未知を体系化していくとき、大切になるのは答えよりも問いだということでしょう。[正しい問いがなされるや問題は解決の緒につく。そのとき、われわれは何が適切であって、何が意味あるかを知る](p.10)とドラッカーは言います。

ビジネスを考える場合でも、全体のモデルが必要です。現実世界では、変化を予期し、方向づけし、管理する体系が必要になっています。ドラッカーはこの論文で、それがいかなるものであるかを示し、これからの課題として問うているというべきでしょう。