■なぜプロフェッショナルが在宅勤務を心配するか:時間の使い方について

    

1 ノルマをこなす仕事

プロフェッショナルといっていい人たちが、現在の在宅中心の働き方を心配しています。どうしてなのかの理由を聞けば答えはあるでしょうが、それよりも実感として危ないなあというのが本音でしょう。明確にこうだからいけないというほどの話ではなさそうです。

この点について少しだけ、理屈をつけてみる気になりました。まず第一に、時間の使い方が気になるのだろうと思います。一般に働く人が在宅でなすべき仕事を終えたなら、どうなるでしょうか。当然、目先のやるべきノルマが終了したら、仕事は終わりです。

職場での仕事でも、それで通っていたかもしれません。しかし本当は、それではまずかったのです。その人がプロフェッショナルであるなら、仕事をした場合、そこに新たなものが加わってこなくてはおかしいでしょう。従来のままでは、不十分ということです。

在宅の仕事では、ルーティンの仕事になりがちですし、それがどうしても優先されます。もし、それがこなせなかったら問題になるでしょう。だからと言って、ノルマをこなしていれば問題ないというのは、組織の仕組みとして問題があるということになります。

      

2 個人の能力にかかわる問題

じつのところ、それまでの働き方に問題があったということです。直接目の届かない仕事の形態の中で、従来から問題だった仕事のあり方が顕在化したということになります。リーダーたちは、業務の改革を頭に思い浮かべながら、まずいと思っているようです。

PDCAといわれるサイクルでも、最後のActionあるいはActはただの行動ではなくて、改善ということになっています。現在、改善提案がたくさん出ているでしょうか。あまり期待できません。そうなると、高いスキルを身につけたプロが生まれにくくなります。

リーダーたちは、自分が仕事を覚えてきた経験をふりかえると、心配になるはずです。これからは伝統よりも、個人的な能力を高めていく方向に行くしかないはずですから、このままで大丈夫なのかと思うでしょう。しかしこれは個人の能力の問題に関わります。

       

3 計画におけるグレシャムの法則

イノベーションを起こし、改善を積み重ねることがマネジメントの中心的課題です。ルーティンワークがこれらを阻害するリスクについて、ハーバート・サイモンは『オーガニゼーションズ』で「計画におけるグレシャムの法則」という概念を提示しました。

これは[ルーチンな仕事の処理に埋没して長期的な展望とか革新的な解決策とかを考えなくなってしまう](沼上幹『組織戦略の考え方』)点を問題にします。目の前の仕事以外の活動に焦点を当てて考えない限り、イノベーションや改善などは生まれてきません。

時間の使い方が鍵になります。この点、ドラッカーも『経営者の条件』で時間に焦点を当てていました。『オーガニゼーションズ』の初版は1958年、『経営者の条件』は1966年の本です。古くからある問題でした。人間性に根差していると言ってもよいのでしょう。

     

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