■業務の記述と業務の整理について:追記(その3)

 

[前回からの続きです。 ] ⇒ 【 その1  / その2 】

1 変わる環境に合わせて業務を変えていく

業務の記述の方法について、2回に分けて書いてみました。あれだけでは詳細がわからないはずです。雰囲気が何となくわかればよいと思います。業務の構築をするためには、自由な発想が必要になります。創造ということです。ここがネックになるかもしれません。汎用性のあるモデルに当てはめるような発想ではありません。面倒です。

ビジネス・モデルの話をしているときに、感覚で決めるしかないという話になると、何だという顔つきをする人が必ずいます。芸術家じゃあるまいし、という批判までありました。発想の違いでしょう。「やはりそうでしたか、公式で決まるはずないですよね、私もそう思います」という人も必ずいます。

業務というものには、正解がありません。最高のものを目指しながら、つねに変わっていく環境に合わせて変えていくしかありません。それを裏づけるのは目的ですが、本当のことを言えば、はじめから明確なものではないのです。目的は後からついてくるものです。最初に思いつくのは、こういうことがやりたい…という程度なのが普通です。

 

2 偶然うまくいったことも含めた理論化

業務を記述するときに、目的を確認していく作業が必須です。それは、うまくいく業務を作るときに、どういう精神作用が働くのか…という点についての洞察がここにはあります。偶然性、ひらめき、何となく、そういう作用があってこそ、理屈を超えた仕組みが出来上がると考えるのです。

この点について、何度か書いています。たとえば…[体系的網羅的なものの危うさ:ヒルティ『幸福論』]。

新しい業務を作るとき、それが目的から出ているにしても、明確な目的意識ではなくて、無意識のうちに前提としている目的から出ていることがほとんどです。明確な目的というのは、後追いで決まっていくという考えをとります。レジ業務など、皆さん自然にご機嫌な対応をします。それが当たり前になっています。

それだからこそ、無意識的なものを意識する必要があります。これは俗にいう「暗黙知を形式知へ」というのとは違います。これは脳の研究が進んでいないときに用語の定義を自己流にしたために起きた誤解でした。この件に関して、以前書いています

偶然うまくいってしまったことを含めて理論化する過程が必要だということになります。まず正しいと思うことをやり、それが定着していくなら、何らかの理屈があるはずです。それを裏づけていく作業が目的の確認です。目的を明確にしていくことによって、業務の成立する根拠が見えてくれば、そこから先の発展があります。

 

3 形作られた業務を後追いして検証

やはり芸術的な発想に近いと言えそうです。創造するときに、一番自由であるはずの芸術家のやり方と類似すること自体、何らおかしなことではありません。芸術家が創造するときの方法もたいてい、こうしたもののはずです。岡本太郎の『壁を破る言葉』に、それを示唆する言葉があります。

[a] 「こういうもの」を表現したい、という最初の衝動がある。描きたいという衝動じゃない。「こういうもの」を、なんだ。(p.32)

[b] 「こういうもの」を描きたい、描くべきだという情熱が起こるまでは、ぼくは絵描きではない。(p.30)

[c] 当然、デッサンする。荒っぽく鉛筆や、墨で、何べんも何べんも自分に問うてみる。「そういうもの」を確かめる。(p.34)

先に「こういうもの」があるのです。それを問うてみる。確かめるのです。理屈で作るのではなくて、あとから理屈が追いかけるのです。上田惇生は、ドラッカーの言葉の中でも重要な言葉として[理論は現実に従う。Theories follow events.]をあげています。『マネジメント(下)』(2008年,p.201)にある言葉です。

岡本太郎も『壁を破る言葉』で言います。

[d] 理論で作品は創れない。(p.61)

[e] まっさらな目をもて! そして目的を捨てろ! (p.14)

[f] 苦労した作品より、ひとりでにどんどん進んでしまったもののほうが、いつでもいい。 (p.35)

あとから目的を確認するからこそ、意味があるのです。ビジネスで業務を構築するときに、芸術と違う点があるのは(あるいは岡本太郎の考えとの違いは)、当然のことです。違いがありながら、通じるものがあるということになります。

ビジネスでは、成果を定義して大きな目的を決めたうえで、個々の業務を考えていくのが王道であると言えます。ここでいう大きな目的とは、前述の「無意識のうちに前提としている目的」です。使命とかミッションという言い方もされています。

こうした前提にもとづいて形作られた業務の中で、うまくいったこと、あるいは想定外の成功や失敗を、あとから検証していくということが必須のことです。「目的」は、業務を記述し整理するときに使われる切り口である…ということになります。

 

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