■日本の専門家についての苦言:アメリカで成功したビジネス人についての話

      

1 苛烈な競争社会のアメリカ

先日、アメリカで成功した日本人のお話を、その業界の方からお聞きしました。アメリカはすごい、日本はとてもじゃないけど追いつけないというお話です。よくある話に聞こえると思います。たまたま、このとき聞いたこととほぼ同じ内容の話を見つけました。

西野精治は『スタンフォード式お金と人材が集まる仕事術』で、日本的な仕事の仕方を否定的に扱っています。西野は、スタンフォード大学で30年、睡眠の研究をしてきた学者です。2020年の本ですから、昔のことですよ…というようなものではないでしょう。

アメリカの研究者は「お客さん」にはフレンドリーですが、同僚になったらいきなり態度が変わるとのこと。競争相手になるからです。[アメリカが苛烈な競争社会であること](p.18)を反映しています。西野は、この方が自由でよいという考えの持ち主です。

      

2 決められたことを指示通りにやる不自由さ

日本企業でビジネスをしている人は、たいていこうした競争社会では生きにくく感じるでしょう。しかし[プロジェクトを一人一人が猛スピードで進めていくのが当然という了解のもと、誰もが必死でやっている]のです(p.20)。自由が何よりも大切になります。

▼「コピー機はこう使え、トイレはあっちだ」と説明してもらい、「君にはこのプロジェクトの、ここを担当してもらう」と仕事を与えられ、「目標は売上**円だ」と課題も設定され、「そのためには先輩に同行してこのやり方をしなさい」と教えられ、「会議で決済するのがわが社のやり方だ」と既存のシステムに従う――。 p.20

これは日本企業なら普通のことかもしれません。しかし[決められたことを指示通りにやるだけで何年も過ごし、結果が出たのかでないのか、誰の成果かもわからない]というのでは、[「自分のやり方で働ける」という自由]がないということです。

      

3 本物のプロの前提条件

先日のお話も同じでした。トップの層だけが、こういう働き方をしているのではなく、かなりの割合の人が、自分のやり方を見いだそうとしているというのです。圧倒的な成功が日本から生まれにくく、アメリカなら可能性があるというのは、何となくわかります。

日本でも、自分は専門家であると主張する人たちがたくさんいるはずです。しかし構想を出してくださいと言っても、なかなかアイデアが出てきません。自分の好きなように、やりたいことをやっていいのなら、次々アイデアが出てきそうですが、それが違うのです。

たとえば…「専門分野で、何がやりたいのか?」「どういう優先順位でやるのか?」「どんなコンセプトで、どこに優位性があるのか?」「ターゲットにする人はどういう人たちか?」「どういう成果を期待しているのか?」。これらにすぐ答えられるでしょうか。

自分の専門分野で、何かをするチャンスがあった時にすぐに、「誰に向けて、どんな順番で、こんなことをしたい、これなら行けますよ、なぜならば…」と言えなくては、専門家でもプロでもありません。日本には本物のプロが少なすぎると、そんなお話でした。